地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

 四川省成都市に拠点を置く「四川航空」。2016年1月18日に成都・成田線を週4便で、2016年1月19日に成都・関西便を週3便で就航させた。今、この四川航空の航空券があまりにも激安なのだ。スカイスキャナーで検索してみると、かつてはあり得なかった低価格が出てくる。

■東京(成田)⇔成都
往路:5月9日
復路:5月13日
運賃:19450円
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■東京(成田)⇔カシュガル(成都経由)
往路:6月19日
復路:6月28日
運賃:24443円
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■東京(成田)⇔ウルムチ(成都経由)
往路:5月11日
復路:5月17日
運賃:24443円
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 新疆ウィグル自治区まで成都経由で行くとなるとやや遠回りではあるが、そうだとしても、東京から新疆ウィグル自治区まで2万円台で行けるなんて前代未聞の事態である。新幹線で東京大阪間を往復するよりも、東京と新疆ウィグル自治区を往復する方が安いのである。
 さらに衝撃的なことに、成田空港ではなく関西空港発着の場合、さらに4400円ほど安くなる。

■大阪(関西)⇔成都
往路:4月26日
復路:4月30日
運賃:15153円
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■大阪(関西)⇔カシュガル
往路:5月17日
復路:5月25日
運賃:20022円
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■大阪(関西)⇔ウルムチ
往路:6月18日
復路:6月24日
運賃:20022円
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 日本から新疆ウィグル自治区まで1万円台で往復できてしまうのではないかという勢いである。
 なお、日本初の四川航空のハイパー激安航空券で行ける中国の都市としては、以下の都市が確認された。

 長沙、昆明、ラサ、麗江、松藩、攀枝花、貴陽、敦煌、銀川

 これらの都市がいずれも東京から往復2万円台である。しかもこの四川航空、LCCではなくフルサービスキャリアで機内食は出るし、荷物も無料で預けられるのだ。さらに、安全性はというと、全航空会社の危険度一覧(2016年版)によれば、2014年、2015年、2016年と3年連続で最高ランクの「7」を獲得しており、何ら問題はない。
 昨今の原油安と円高があるとはいえ、なぜこのようなことが可能なのだろうか。これを利用しない手はないと思い、航空券を購入してしまった。

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 東京(成田)と麗江の往復航空券で、たったの23732円(運賃22601円にクレジットカード取扱手数料1131円を含めたもの)だ。雲南省はかつてから行きたかったが、こんなにもあっさり訪問することが決定するとは思いもよらなかった。
 もしかしたらこれは予約システムのバグなのではないかと思い、今後、航空券が取り消されてしまうのではないかと恐れている次第である。今まではこの区間、閑散期でも中国南方航空で5万円はくだらない区間だったのに、半額以下の運賃が提示されているのを見る限り、尋常ではないという気がする。
 このハイパー激安運賃でいつまで航空券を購入できるのか分からないが、四川航空についてはこれからも注視していきたい。


 ちょうど、春節の直後の中国訪問で、街は春節の装飾に溢れていた。

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【2016.2.18】歩道橋

 この歩道橋もこの通り、春節に染まっている。日本の正月もめでたいものだけれども、そのめでたさをこのような派手さではあまり表現しないよなと思う。中国の春節はそのめでたさを本当に派手に表現する。
 地下鉄2号線の小寨駅から、徒歩で大雁塔へと向かう。大雁塔もやはり、西安の市街地にある。西遊記に登場する「三蔵法師(玄奘三蔵)」が、16年間インドで仏教を学んだのち、持ち帰った経典や仏像を保存するために、塔を建てたところだ。

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【2016.2.18】大雁塔

 大雁塔の前は噴水広場になっており、思ったよりもにぎやかなところだ。もともとこの噴水広場を含めた大雁塔周辺の150haは「唐の歴史文化を尊重した現代唐風の町」をコンセプトとして、日本の日建設計によって提案、整備がなされたという。

西安大雁塔周辺地区整備計画と北広場計画(日建設計)
視線をつなぐ 西安大雁塔周辺地区都市設計(日建設計)
水と光と音楽でまちの楽しさを西安大雁塔北広場(日建設計)

 一つ目のリンクを見ると、「当初は、広い水面と大雁塔を中心とする『静かな祈りの空間』をイメージしていた」とあるけれども、実際にどうなったかというと、西安市民と中国全土からの観光客が集まるにぎやかな空間となったから面白い。移動販売車が出ていたり、自撮り棒を売る人だとか、おもちゃを売りに来る人がわんさかやってきている。日本人がそうあってほしいと思った空想と、実際の中国市民の解釈にずれがあったのだ。都市計画や都市設計というのは目論見通りにはならない。人に使われるまではどうなるか分からなし、人に使われてこそ初めて完成するものなんだということを教えてくれる。もしかしたら日本人の設計チームは、中国という場に対する想像力が不足していたのかもしれないけれども、結果的に西安という都市の魅力を向上させているなら、結果オーライだろう。
 入場券を買う。

大慈恩寺表

 なお大雁塔がある寺院は、「大慈恩寺」という名前となっている。ちなみに、大雁塔という名は、雁の群れからはぐれて死んで地面に落ちた一羽を、菩薩の化身だと思い大切に供養したという話に由来するという。なんとも情感のある話だ。

大慈恩寺裏

  中へと足を踏み入れる。 

IMG_4327【2016.2.18】大雁塔

 大雁塔はもともとは5階建てだったが、のちに7階建てへと増築されたという。

IMG_4335【2016.2.18】大雁塔

 大雁塔は幾度か改築、修繕されているが、唐代の建築である。西安のみならず、中国で唐代の建築が残っているというのは数が少ない。
 大雁塔にのぼるには、別途入場料を払ってから入る。

大雁塔表

 冬季であるからか、入場券も冬の装いだ。

大雁塔裏

 塔をのぼる。やや急な階段ではあるが、普通の建物の階段のようにのぼることができる。武漢で体験した塔(#0143.武漢「宝通寺」 - 体をよじらせつつ古塔をのぼる)とは大違いだ。
 7階までのぼって、周囲を見渡す。

IMG_4337【2016.2.18】大雁塔からの景色

 古都の雰囲気が感じられるだろうか。

IMG_4339【2016.2.18】大雁塔からの景色

 たぶん、昔はこのような瓦屋根が延々と続いていたんだと思う。

IMG_4342【2016.2.18】大雁塔からの景色

 それにしても、空気の砂っぽさを改めて感じる。

IMG_4343【2016.2.18】大雁塔からの景色

 噴水のある広場にはたくさんの人がいて、いかにも賑やかそうだ。塔自体はもはや、展望台という感じであった。内部に仏像が置かれているというわけでもなく、インドから持ち帰られた経典が置かれているわけでもない。けれども過去、長安の一番高いところにインドから持ち帰られた経典が置かれていて、街全体を加護していたという想像力を膨らませるには十分だった。
 塔を降りてから回りの建物を見て回る。

IMG_4347【2016.2.18】大雁塔からの景色

 振り返ってみると、大雁塔がみえる。

IMG_4350【2016.2.18】大雁塔からの景色

 大雁塔はやや傾いでいる。これが時の重みというものなんだろうか。

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【2016.2.18】大雁塔からの景色

 最後に広場で果物を水飴で固めたものなどを買って食べ歩きながら、宿へと戻ることにした。

■大雁塔
開放時間:午前8時半~午後6時



 地下鉄2号線の小寨駅を降りる。この駅も、駅に直結した地下街と大きなショッピングモールがあって、いかにも都会という感じだ。最近、中国の各都市では地下鉄の建設が猛スピードですすめられているが、地方政府は建設のための財源を確保するために地下鉄駅周辺の土地を払い下げたり、不動産開発を積極的に推し進めているというから、そういうことと関係があるのかもしれない。

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【2016.2.18】小寨駅周辺

 駅から8分ほど歩くと大興善寺があらわれる。もともと3世紀の265年に創建された寺院で、西安に現存する最も歴史の古い寺院のうちの一つだそうだ。唐代にはインドから開元三大士、すなわち善無畏と金剛智と不空の3人がこの寺にやってきて、密教(大乗仏教の秘密教)を教えにやってきたという。ちなみに、この密教はのちに遣唐使によって日本に持ち帰られ、真言宗や天台宗へとつながっていくものだ。

IMG_4281【2016.2.18】大興善寺

 唐の長安において、インドからもたらされた仏教の経典を翻訳する三大翻訳地のひとつだったというが、今は高層ビル街の近くにある寺院で、中国仏教密宗発祥の地も見下ろされる存在となっている。
 寺院の前には物乞いがいる。愛想がよくて「新年快樂!」などと言っている。

IMG_4284【2016.2.18】大興善寺

 街中はクラクションでうるさいんだけれども、中に入ると本当に静かだ。なぜだろう。塀一つで隔てられているだけなのに。

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 境内には三世代の家族などがいて、和やかな雰囲気である。

IMG_4287【2016.2.18】大興善寺

 夏になるとどのような景色になるのだろうか。木陰が気持ちよさそうだ。

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 この寺院は思いのほか広い。

IMG_4295【2016.2.18】大興善寺

 さらに奥へと進むと、池のある庭園などがあって、人々と鳩たちが三々五々、休息をとっていたりした。
 ちなみにこのお寺には弘法大師(空海)の像がある。彼が遣唐使として長安に滞在していた時、この寺院に立ち寄り、密教を勉強をし、帰国後に、真言宗を開いている。つまり、日本との縁が深い寺院なのである。

IMG_4310【2016.2.18】弘法大師

 この像の前で祈祷をしたら、中国人は日本人の前で土下座をするということになる。それは構わないのだろうか(笑)いや、宗教に国境などはないのだ。宗教とは国境やナショナリティー、民族を超えた普遍的な価値観なんだと思う。
 境内にはこの他にも、日中仏教交流記念碑や、中日友好を語った文言などがあった。また、高野山との交流もあるようだった。 こういうものを見るにつけ、現在の日中関係については嘆かわしく思う。大興善寺でやっているように、お互いの地域の歴史や文化を畏敬の念をもって尊重しあい、太古の昔からの交流の成果を評価しあえる社会的な雰囲気が醸し出されればいいと思う。とはいえ、政府次元では到底なされそうにもないから、民間次元で努力をしていかなければならないと思うのだけれども、そういう考え方は今の日本社会に広く共有されているだろうか。それもまた疑問に思えるのは残念だ。



 西安で迎える2日目の朝。この日も暖かかったが、やはり空気は乾燥していて、砂っぽい。

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【2016.2.18】西安市内

 中心市街地のこのような街並みはいつまで見られるんだろうか。10年後、西安を訪問した時も残っているだろうか。砂埃を被った家々と、その隙間から生えている樹々。そういえば以前、ウズベキスタンでもそんな光景を見た(#0051.サマルカンド - 「Jahongir B&B」のおもてなし)。ウズベキスタンのそれよりはずっと人口密度が高いのだが、西域の空気感に、漢族の都市の人口密度の高さが重なり合っている。
 朝食は宿の近くにあった「蘭州牛肉拉麵」で食べることにする。

IMG_4243【2016.2.18】蘭州牛肉拉麵

 店内は回族らしく、つばのない帽子(回回帽)を被った男性たちがあくせくと働いている。客には帽子を被っている回族もいたが、漢民族とみられる人の方がむしろ多かった。

蘭州拉麵

  「新疆拌麺」を注文すると10分くらいして、出てきた。

IMG_4239【2016.2.18】新疆拌麺

 日本でいう、つけ麺のような外観だ。

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【2016.2.18】新疆拌麺

 麺だけを食べてみる。麺の厚みや太さにムラがあって、いかにも手作りという感じがする。そして、小麦粉をこねた匂いと味が感じられて、もしかしたらそれは「臭い」のかもしれない。

IMG_4241【2016.2.18】新疆拌麵

 こちらが具だ。羊肉だろうか若干の肉に野菜がたくさん入っていて、具だくさんという感じがする。
 さて、どうやって食べるのだろうか。最初は日本のつけ麺のように、箸で幅太の麺を持ち上げて、具の方にもっていってから食べていたのだが、他のお客さんのようすを見てそうではなく、具を麺にかけるものであったことに気付く。中国で「拌麺」とあるものは、麺に具がかかった状態で出てくるものと、麺と具が別々に出てくるものがあるそうだが、別々に出てきた場合は、具を麺の上にかけてから混ぜるのが正解だという。
 具はとても塩辛かった。そして、麺は咀嚼しているうちに、いかにも小麦粉をこねた塊のようなものを口に詰めこんでいるように感じられて、食体験としては悪くないけれども、それ以上のものではないように思った。見た目はおいしそうなんだけれども。
 このお店の道路を挟んで反対側にマクドナルドがあったので、お茶を飲むことにした。

IMG_4244【2016.2.18】マクドナルドのお茶

 それにしても西安の料理の味付けは、何もかもが塩辛い。ただでさえ空気が乾いているというのに、塩分のせいで体がさらに水を欲する。

IMG_4246【2016.2.18】マクドナルドのお茶

 西安の料理は未来永劫、塩辛くあり続けるのだろうか。それとも、経済的により豊かになって、市民が健康に気をつかう、あるいはお金を使うほどの余裕が生まれるようになれば、西安の料理にも減塩ブームが訪れるんだろうか。そんなことを考えながらお茶を飲む。西安は料理の種類は豊富だし、見た目もおいしそうなものが多いから、どれを食べても塩辛いというのはもったいないように思うのだが。



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