深夜に西安に到着したから、鼻の奥をつんとつく乾燥した空気を除いて西安の印象はとりたてて無かった。西安で迎える朝、ホテルの客室のカーテンを開いて初めて西安がどんなところかを目にする。

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【2016.2.17】西安の街並み

 たくさんのビルが立ち並んでいて、思ったよりも大きな都市に思える。西安といえば、隋や唐の、悠久の古都、長安のイメージがあって、さほど都市というイメージは無かったのだが、それは僕の思い違いだったようだ。

IMG_4046【2016.2.17】西安の街並み

 それに何よりも砂っぽい。この砂っぽさは、湖北省の武漢や武当山にはなかった。陝西省の省都、西安。なんだか西域を予感させる空気感だ。陸のシルクロードはここからトルコの方まで、ひたすら砂漠とオアシスの繰り返しだったか。
 午前11時までゆっくり休んでから、朝食を食べにいく。ホテルの近くにある「王媽涼皮」というチェーン店で食べることにする。チェーン店だが、西安料理を主に扱っている。

IMG_4047【2016.2.17】涼皮と肉挟饃

 涼皮と肉挟饃のセット。涼皮はやや平たく作ったつるつるの麺で、冷たいままタレをかけて食べる。西安の名物だけれども、タレがあまりにも塩辛くて、食塩水に麺を浸して食べているような感じだった。

IMG_4051【2016.2.17】肉挟饃

 それから、肉挟饃。「饃」というパン生地、いや、ピザ生地と言った方が実感にはそぐうかもしれない。その中に、牛肉や羊肉をはさんだものである。西安中にお店があって、ファストフードとして手軽に食べられているようだった。街頭で売られているのを見る限りでは、手が脂でぐちょぐちょになりそうなくらいたくさん肉が入っている「饃」なんかもあった。野菜こそ入っていないもののケバブに似ていて、シルクロードを想起させる。
 ところでこの「饃」、西安市内では看板などのよく見ることのできる漢字なのだが、西安から離れた地域出身の中国人は漢字を見てもそれが何であるのかピンとこない中国人も多いというから、中国は広い。
 このお店の肉挟饃も僕には塩辛かった。喉が渇いて仕方がないから、セットにつけたマンゴージュースを流しこむ。ちなみにマンゴージュースは常温で出てきた。寒い冬に冷たい飲みものは体に悪い、というのが中国の人の考えにあるようだ。
 地下鉄に乗って、市の中心部にあたる鐘楼エリアへと向かう。

IMG_4064【2016.2.17】鐘楼周辺

 西安市内の見どころは、地下鉄で行けるところが多い。そう、西安は地下鉄が整備されているほどの大都市なのだ。利用者がとても多くて、来るたび来るたび昼夜を問わず、車両は満員だった。
 調べてみると、西安市は面積が約1万平方キロメートルで人口が860万人にもなるそうだ。そのうち、中心部の人口だけで500万人を超えているというから、日本でいうと福岡都市圏ほどの都市規模はある。古都という言葉の響きとはなんだかそぐわない。

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【2016.2.17】鐘楼周辺

  鐘楼は東大街、西大街、南大街、北大街の4つの通りが交わるいわば都市の中心にあり、かつては鐘を撞いて人々に時を知らせる役割をしていたという。明代の1384年に建てられ、高さは36mにもなる。昔は鐘の音は西安中に聞こえ、朝の鐘の音が鳴り終わると同時に東西南北の城門の扉が開けられたそうだ。しかし現在は、鐘を撞いたって、ロータリーとなっている鐘楼の周囲を走行する車やバスのクラクションの音に紛れて聞こえそうにもない。
 西安のこの西域を予感させる大気の感じはきっと太古の昔から同じなんだろうけれども、人間の都市活動や経済活動は21世紀そのものなのである。