西安の城壁へと向かう。南門にあたる永寧門は、地下鉄2号線の永寧門駅のすぐ目の前にあるからか、観光の起点となっている。南門だけでなく、他の門からも入場することができる。
 現在の城壁は明代の1370年から1378年に作られたものだという。

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【2016.2.17】永寧門

 門ひとつからして、壮観だ。

IMG_4167【2016.2.17】お濠

 城壁の周りには、お濠がめぐらされている。
 城壁への入場料は54元(約940円)だ。

城壁・表

 城壁は旧市街を取り囲んでいる。一周、13.9kmにもなるが、現存する都市の城壁としては、世界最大のものだという。入場料を支払えば、その13.9kmの区間をすべて見て回ることができる。

城壁・裏

 午前8時から入ることができるので、時間に余裕のある旅行者なら、一周、ゆっくり歩いてみるのも悪くないとは思うけれども、4時間ほどはかかってしまいそうだ。
 一つ目の門をくぐると、中にひとつ、大きな建物が現れる。

IMG_4168【2016.2.17】永寧門

 その建物を左に回り込む。

IMG_4170【2016.2.17】城壁

 人の大きさからして、城壁がどれだけ高いかが分かると思う。約12mあるという。さらに、分厚い。城壁の断面は台形であるが、下底が18m、上底が15mほどあるという。高さよりも分厚さがある。そう考えると、この城壁はついたてや境界を示すために存在するような生易しいものではないということが分かる。この上なく強固な防衛線なのだ。
 中にはいると広場が現れる。ここから、城壁へと登る。

IMG_4172【2016.2.17】永寧門

 それにしても全長13.9kmにもなる高さ12m、厚み18mの壁をたった8年の間で完成させるとは驚きである。さすが中国、その人口の多さは今も昔も同じで、労働力は豊富だったのだろう。
 西へと進んでみることにした。

IMG_4178【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 城壁に面している部分に関しては景観に配慮して設計された建物が立ち並んでいる。必ずしも昔の建物がそのまま残っているというわけではないが、かつての西安の情景を思い浮かべるには十分だと思う。
 城壁の上を多くの観光客が行き交っている。別途料金を支払えばレンタサイクルもできる。夕方になって肌寒かったし、午後6時までには必ず自転車を返さなくてはならないとのことだったから乗らなかったけれども、新緑の季節に城壁の上を颯爽とサイクリングしたら、とても気分がよさそうだと思った。

IMG_4185【2016.2.17】城壁にて
 
 歩いていると…。

IMG_4187【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 屋上で談笑にふける西安市民のすがたなどがみえる。
 城壁にのぼると、市民の生活が垣間見えることがあって面白い。

IMG_4189【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 城壁の周辺に関しては条例か何かで、伝統的な意匠にするよう定められているようにみえる。この手の修景事業の度が過ぎていて、時々、テーマパークにいるような感覚を覚えてしまう。

IMG_4201【2016.2.17】城壁にて

 左が城壁の内部で、右が城壁の外部である。内部は外部に比べて、容積率が抑えられていて、超高層のビルは建てられていない。

IMG_4202【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 南門から西門へと向かうだけなのに、なかなかたどりつけない。

IMG_4203【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 ようやく、端っこが見えてくる。

IMG_4207【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 いよいよ日が暮れてきそうな気配を感じる。

IMG_4209【2016.2.17】城壁にて

 気温が下がってくると、やはり西安の空気は辛いように感じられる。乾燥していて、砂っぽくて、鼻の奥、喉の奥をつんと刺激してくる。
 ようやく西門にたどり着いた。西門はまたの名を、安定門という。

IMG_4217【2016.2.17】城壁からみた西安の風景

 樹木がさびしげに一本生えている。
 思えば、ここは西安の西の門だ。入口であり出口である。シルクロードの起点と終点にはさまざまな説があるが、西安(長安)を端点とするという説は強い支持を得ている。西安を端点だとすると、安定門、つまりこの西安の西の門は、西域への発着点ということになる。
 かつて西域へと向かう人々は、漠然とした、得体のしれない不安感、孤独感を抱いていたに違いない。
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【2016.2.17】安定門

 月が出ている。

IMG_4223【2016.2.17】お濠

 西方へ思いを馳せながら、城壁を下りることにした。