地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

2015年11月

 同じ中華圏であっても、台湾や香港は書かれていることは大体分かる。台湾や香港で利用される漢字 - 繁体字と、日本で利用される漢字 - 新字体は似ている。しかし、中国大陸に行くと事情は異なる。そこは人民の識字率の向上を目的に1950年代から策定された簡体字の世界になる。簡体字は、繁体字や新字体よりも大幅に簡略化されており、知識がないと元の漢字が何であったのか分からないものも多い。
 日本人や台湾人や香港人はいう。「伝統文化を尊重していない。」「美しくない。(日本のいくつかの新字体も美しいとはいえないが・・・。)」「人工的だ。」僕も、2000年もの間ほぼ変わらなかった表記体系に、識字率を向上するとの名目で手を付けてしまったことは残念なことだと思う。そもそも中国大陸よりも、繁体字を利用している台湾や香港の方が識字率が高く推移していることを考えると、簡体字の採用が識字率向上に効果があったのか、いささか疑問が残る。

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【2015.10.29】廈門・東渡碼頭にて

 世界各国の言葉で「愛してる。」を表現したかったようだ。日本語は、「爱している。」となっている。「~している。」という表現がかたくるしくて、あまり口語的ではないことはさておき、「爱」という漢字が気に入らない。心無くして、なぜ愛なんだろう!いや、その代わり、簡体字には友情の「友」があるではないかという反論もあるというが、僕は、「心」が入っている方が好きだ。
 よくやり玉にあげられるのが以下のような簡体字である。

■愛無心
愛
心なくして、どう愛することができよう。

■親不見
親
親は子どもの面倒をみなくなった。

■產不生
産
「生」なくして、どう生産活動ができるのか。

■麵無麥
麺
小「麦」粉が無いのに、どうやって麺を作るのか。

■有雲無雨
雲
雲は、雨を降らせなくなりました。

■運無車
運
車無くして、どう物を運べるのか。

■飛單翼
飛
たった一枚の翼で、どう飛ぼうというのか。

■導無道
導
進むべき道すらないのに、どう、人を導くことができようか。

■聖不能聽也不能說
聖
耳も口も失い、聖人は話すことも、聞くこともできない。

■開無門
開
開こうにも開く門がない!

 いくつかは、単なる簡体字に対する皮肉に留まらず、昨今の世の中を批判しているようにもみえる。そしてやはり、簡体字についてはあまり共感できない。漢字として、欠いてはいけない何かを欠いているように思われるからだ。


 タシュケントの宿は全般的に価格が高い。安宿はあまり充実しているとはいえない。(2014年7月当時はそうであったが、2015年になりゲストハウスやB&B、ホステルが増え、状況は変化しつつあるようである。)僕も友人もまだ学生であったから、あまりたくさんのお金は持ち合わせていない。
 Booking.comで検索したところ、一番安価だったのがMirzo B&Bだった。このゲストハウスには、到着した日である7月14日の夜と、ウズベキスタンで過ごす最後の夜である7月20日に宿泊することになった。
 ツインの部屋が約26ドル(2人)、空港からの送迎サービスが15ドル(2人)で、ウズベキスタン国鉄の乗車券の予約が10ドル(一人当たり)でだった。夜の11時を過ぎてからゲストハウスに到着してくれたにも関わらず、次の日にタシュケントからサマルカンドへ向かう乗車券が購入できたのは幸いだった。インターネットの予約ができず対面購入しかできない上、ウズベク語もロシア語も分からないとなると、ゲストハウスの彼が頼みの綱となる。送迎サービスと代行料は相場よりやや高いようではあるが、部屋の料金を安く設定し、その他サービスで稼ごうというのが彼らのやり方なのだろう。なお、ウズベキスタンでホテルに宿泊すると、2ドルの宿泊税がかかるため、別個に支払う必要がある。次の日の朝、宿からタシュケントの鉄道駅までは無料で送迎してくれた。
 この宿は家族経営であったが、その経営には英語の堪能な当時、満23歳だという息子さんが中心となっているようであった。自分と同世代の人間が、ゲストハウスを経営し、様々な国からの旅行者をもてなしている。それはとてもかっこいいことだと思った。僕も今まで、旅行中、さまざまな人のおもてなしを受けてきた。けれども、いつも、受けてばかりなのだ。時には恩返しをしたいと思う。もちろん、僕をもてなしてくれた人々に直接恩返しすることはできないけれども、世界の旅行者をもてなすことで、間接的には恩返しができると思う。けれども僕にとってまだこれは実践段階ではなく、希望事項でしかない。

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【2015.7.15】宿で迎える朝

 サマルカンドへ向かう列車が、8時半に出発するため、朝早く起きる必要があった。6時半にしてすでに、昼のように明るかった。ゲストハウスの家族よりも早く起きてしまった。ゲストハウスの家族もじきに目を覚まし、柿の木のある中庭に朝食を用意してくれた。メロンが蜜のように甘かったことを覚えている。やはり、雨の少ない地域の果実は、甘みが凝縮する。

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【2015.7.15】中庭

 朝の空気は爽やかではあった。しかしながら日の光には、明らかに昼には暑くなるだろうという予兆が含まれていた。あまりにも明るいのだ。

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【2015.7.15】地図

 地図にはロシア語で、「Ташкент(タシュケント)」とある。

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【2015.7.21】果物

 これは、7月20日にこのゲストハウスに戻ってから、泊まったときに出てきた食事だ。やはり砂漠地帯の果物は甘みが凝縮していて、おいしいと思う。

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 【2015.7.21】食器類

 スプーンとナイフ。ナイフの文様をみてハッとした。「松に鶴」ではないか。この、長寿のものの組み合わせで、屏風絵や日本画の題材として使わたり、花札などにみられる縁起のよい組み合わせがウズベキスタンでみられるとは。中国に起源があり、日本、韓国、中国等、漢字文化圏でのみみられるものだと思っていたが、ウズベキスタンにもあるのだ。中国の文化は、韓国、日本と東側に伝わっただけでなく、西側へも伝わっているのだ。ウズベキスタンには、中国を介して、日本と文化的に近似した部分が時々見え隠れする。
 ゲストハウスの家族のお父さんはかつて大学で教鞭をとっていたという。ウズベキスタンの歴史に詳しく、英雄アミール・ティムールについてのお話をしてくださり、また、ウズベキスタンの伝統音楽を伝統の弦楽器で演奏してくださりもした。そして、お父さんは、「ウズベキスタンは世界に知られていないと思う。あなたたちは興味をもって来てくださったから、喜ばしいことだ。」という。「天文学や数学の発展の歴史には、イスラム圏やこのウズベキスタンの地が関わっているというのに知られていない。その貢献の割に、知られていない。」ウズベキスタンは1991年にソビエト連邦が崩壊するまで、ソビエト連邦内を構成する一地域でしかなく、国際的な発言力はおろか、認知すらされていなかった。国を持つか、持たないかということは、世界における人類の歴史の記述に参画できるか、できないかということにも大きく関わるのだろう。これは気の毒なことだと思う。



埼玉県入間郡毛呂山町にある「鎌北湖」という湖に、紅葉狩りに行った。11月に暖かい日が続いたせいか、今年の奥武蔵の木々の色づきは、さほどよくない。やはり朝夕の厳しい冷え込みにさらされないと、鮮明には色づかないようだ。

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【2015.11.28】鎌北湖

 鎌北湖は1935年に完成した農業用の貯水湖だという。毛呂山町によると、別名、「乙女の湖」と呼ばれているそうだ。なぜ、乙女なのだろうか。高いところからみると、山あいにあるこの周囲約2kmの小さな湖は、孤独に、乙女の涙のようにちょこりと佇んでいるように思われる。あるいは、ここで女性が投身自殺でも図ったのだろうか「乙女の湖」といえばなんだかロマンチックに思われるけれども、実際の湖を目にしてみると、浪漫なんかこれっぽっちも感じない。むしろ、想像は暗い方へと傾いてしまう。

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【2015.11.28】ドウダンツツジ

 ドウダンツツジの葉が真っ赤に紅葉している。

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【2015.11.28】鎌北湖

 この湖、1929年の世界恐慌をきっかけとする不景気の、景気対策の一環としての公共事業によりつくられたという。世界恐慌を克服するため、アメリカでは大統領のフランクリン・ルーズベルトがニューディール政策を称して、政府により数多くの公共事業がおこなわれたが、日本でも同じ時期に、同様のことがおこなわれたわけである。特に、当時、奥武蔵では、養蚕業が盛んであった。生糸は主に、欧米諸国に輸出されていたが1929年を境に全く売れなくなってしまったという。なぜ湖がここにあるのかといえば、この地域が世界恐慌の打撃をもろに受けたからであろう。鎌北湖は、世界恐慌の歴史を色濃く残している。
 
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【2015.11.28】鎌北湖

 説明板によると、春には桜、秋には紅葉が有名だという。単純だと思う。人造湖をつくり、観光地とするために、桜の木と紅葉の木を植えたといったところだろうか。そう考えると、「乙女の湖」という名前も、そこには由来などなく、観光客を呼ぶためになんとなく響きのいい名前をつけてみたというのが、実際のところであろうか。

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【2015.11.28】紅葉

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【2015.11.28】紅葉

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【2015.11.28】紅葉

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【2015.11.28】紅葉

 晩秋を楽しむ。

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【2015.11.28】水面

 木々の赤、緑、黄色に、湖の青色が美しい。

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【2015.11.28】鎌北湖

 湖畔には「山水荘」という廃業したホテルがあり、心霊スポットとして有名だそうだが、この廃墟の存在がこの湖の雰囲気をより暗くしていることは否めない。昭和の乙女はこれからも、ひっそりと忘れられていくのだろう。

■鎌北湖への行き方
東武越生線東毛呂駅から約5.4km
JR八高線毛呂駅から約4.2km


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