ウズベキスタン国鉄のタシュケント駅まで、ゲストハウスの家族の息子の自動車に乗せてもらう。ウズベキスタンで有名な自動車メーカーの名前だとか、サッカー選手の名前を口にして、日本に対する親近感を示してくれた。また、旅を始めるにあたり、「ウズベキスタンではものを買う時、必ず値段の交渉をして負けてもらうようにしてね。日本から来る人たちはみんな損しているから」とのアドバイスをもらう。せっかくの旅行なのに神経戦で消耗するのはいやだから、言い値で買うか買わないかという選択をする日本人が多いんだろう。僕もそのような日本人の一人で、そういった交渉の類はめんどくさがる方である。

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 タシュケント駅午前8時半発、サマルカンド駅正午到着予定。350kmの距離を3時間半で駆け抜ける。平均時速100km。かなり速い。ちなみに、こちらはすでに満員となっていて買えなかったのだが、350kmの距離を2時間10分で駆け抜ける、特急アフラシアブという高速列車がある。発展途上国への高速鉄道の輸出が話題となっている昨今であるが、ウズベキスタンには平均時速170kmで駆け抜ける高速鉄道がすでに存在するのである。
 タシュケント駅に入る前、パスポートとチケットのチェックと、荷物のX-Ray検査がおこなわれた。空港さながらのセキュリティ検査がおこなわれる。駅に入ると、2人のメイド服を着た清掃員のおばさんがモップをかけていた。そうか、メイド服とはこう使われるものなのか。駅構内は撮影禁止だったから、残念ながら写真はない。ウズベキスタンにおいて、政府機関や、鉄道・地下鉄などの公共機関の撮影は厳しく禁じられているため、気を付けなくてはならい。
 列車に乗りこんだが、ひどく暑かった。特急アフラシアブではないため、冷房は取り付けられていない。列車が走り出してから、窓を開けると風が入り込んできて、ようやく息をつけた。
 装甲ちゅう、各車両に一人ずついる乗務員の男性が僕らのところにやってきて、「Would you like tea or coffee?」と尋ねたので、コーヒーを頼むと、しばらくして二人分のインスタントコーヒーが出てくる。

「他の乗客には、そんなことを尋ねるそぶりもしていないのに何で俺たちにだけ?」
「さあ。外国人に対する『おもてなし』なんじゃないの?」
「それは素晴らしいね。日本は『おもてなし』っていうけれども、新幹線に外国人が乗車していたからって無料で飲み物をくれることはないよね。これがウズベキスタンか。俺たちも、ウズベキスタンの『おもてなし』をみならう必要がある。」
「ところでこれ、本当に無料なのかな。」
「そういえば、確認してなかったね。」

 しばらくするとコップを片づけに、さっきの乗務員がやってきた。去り際に「money」という。それは5、60円程度で大した値段ではなかった。けれども勝手に、ウズベキスタンの『おもてなし』だと思って感激していた僕にとっては、やや後味が悪かった。なんで僕たちにだけ「Would you like tea or coffee?」と尋ねたのだろうか?

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【2014.7.15】ウズベキスタンの少女たち

 やはり外国人は目立つらしい。終始、異国語を駆使する僕らに視線が集まっていたように思う。
 近くに座っていた少女たちと談笑することになる。談笑といっても大した話はしていないけれども・・・。まずは「Where are you from?」、「How old are you?」、「What's your name?」という通り一遍のやりとり。そして、家族について「What's your mother's name?」と尋ねられる。
 この時、僕と、僕の友人の母親の名前が同じであることを初めて知る。そうなのだ、高校時代から付き合いのある友人でさえ、母親の名前となると分からないのだ。日本ではそうなのだ。しかし、ウズベキスタンでは初対面にも関わらず、母親の名前、そして父親の名前を尋ねてくる。ウズベキスタンでは相手のことを理解するのに、相手の両親がどのような人であるのかということが、関心事のうち上位に入るようだ。そして、両親の写真を見せてくれないかと頼まれる。しかし、あいにく、僕のスマートフォンには家族写真が入っていなかった。そのような日本人をみてウズベキスタンの人はどのように感じたであろう。

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【2014.7.15】ウズベキスタンの少女たち

 また、彼らは新体操の選手だという。幼いころから国際大会に出場した経験もあって、ドイツでおこなわれた競技大会のようすをスマートフォンに動画としておさめたものを見せてくれた。将来、彼女たちはオリンピックに搭乗するかもしれない。2020年に体操の選手として、僕のふるさと - 東京にやってくるかもしれない。そして、東京で再会するのかもしれない。もし、そんなことが起こったらそれは素敵だと思う。
 一通り話が終わって、各自の席に戻ったかと思うと、少女はまたやってきて僕の背中をとんとんと叩き、ビスケットをくれた。だから僕は、リュックサックの中から、日本から持ってきた「スーパーレモンキャンデー」を渡した。

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 飴の周りについている粉末の強烈な酸っぱさが話題になった、日本のお菓子である。ウズベキスタンでは経験できない衝撃的な味だったようで、彼女らは目を丸くして驚きながら、きゃっきゃと声を上げていた。近くにいたお母さんにも、「さっき食べたお菓子すごいんだよお。」と自慢しているようだった。ちなみに、友人は日本から「ポイフル」を持って来ていたんだけれども、それも彼女らに好評であった。こういったお菓子の交流は愉快なので、日本人のみなさんは旅行の際、何かお菓子を持っていくのがいいと思う。特に、「スーパーレモンキャンデー」は反応がいいので、みなさんにもオススメしたい。
 また少女がやってきてキャンデーのお礼なのか、パンに塗るチョコレートクリームをひとつ持ってきてくれたのでありがたく受け取った。お礼がお礼を呼ぶのは、日本もウズベキスタンも同じらしい。
 彼女らは「ナヴァーイー(Navoiy)」という都市まで行くという。サマルカンドよりも先にある都市だ。いいところだから、是非来てねという。

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【2014.7.15】ウズベキスタン国鉄車内

 前にいた少年とは、座席をつかってかくれんぼをしながら遊んだ。
 車内には絨毯が敷かれていて、いかにもウズベキスタンらしい。多くの乗客が上を歩くと、絨毯がよじれてしまう。よじれるたびに乗務員がやってきて、真っすぐ伸ばしていた。天井にはモニターがあって、作中にカザフスタンの地名が登場するドラマが放映されていた。

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【2014.7.15】ウズベキスタン国鉄のシートカバー

 サマルカンドに到着する。3時間半の旅はあっという間だった。ウズベキスタン国鉄に乗車した記念にと、座席のシートカバーをひとつ持って列車を降りた。

2014年 夏ウズベキスタン7泊8日
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