地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

2016年02月

 朝7時前には目を覚ます。とはいえ前日には夜8時前には寝入っていたので、11時間睡眠をとっていたということになる。

IMG_3781
【2016.2.16】部屋の窓から

 東の空を除いて、空はすっかり分厚い雲に覆われている。昨晩は星がよくみえていたことを考えると、寝ている間に雲がたちこめてしまったようだ。
 7時半から朝食だというので、食堂へと向かう。

IMG_3779【2016.2.16】朝

 まだ7時半だったがすでに観光車が運行していて、標高の低いところからせっせと参拝客を運んでいた。南岩までやってきて、金頂へと向かう人たちだろう。中国人は朝から、元気がいい。いや、それも当然か。どうせ夜になるとすることもない山の中。早く寝て、早く起きたんだろう。朝早くから修行に励む道士のすがたが見られたらいいなと期待していたが、南岩の宿の周辺では見ることができなかった。このあたりはあくまでも観光地であることに徹しているように思った。
 宿の朝食で出されたものはまず、ジャージャー麺。

IMG_3784【2016.2.16】ジャージャー麺

 それからゆで卵と、小米粥という粟のお粥だった。

IMG_3785【2016.2.16】ゆで卵と小米粥

 中国の山荘の朝食とはこのような感じなのだろうか。小米粥は薄味だがほんのり甘味があって、とても食べやすかった。しかし、胃に刺激の強い辛い味のジャージャー麺と胃に優しい小米粥という取り合わせは極端なようにも思える。
 さて、この日、武当山をどう回ろうか考える。

武当山地図【2016.2.16】武当山

 現在は南岩にいる。武当山の主な見どころは、南岩、南岩から金頂へと向かう道、金頂、瓊台、太子坡、逍遥谷(太子坡と紫霄宮の間のあたりにある)、紫霄宮があるが、この日は午後6時44分に武当山駅を出発して西安へと向かう列車に乗らなくてはならないから、午後4時には宿に預けておいた荷物を引き取って下山したい。全ての見どころを回ることはできないと思う。1泊では不足だったか。じっくり見まわるなら少なくとも2泊は必要だ。旅行の計画が駆け足気味だったとこは否めないと思う。
 とりあえず、山頂にあたる「金頂」へと歩いて登ることにした。それからロープウェイで瓊台に降り、観光車で太子坡経由で南岩まで戻ろうか。そう心に決めて、宿を出発した。

■武当山旅行記
#0148.武当山旅行記1 - 武当山へと入山する
#0149.武当山旅行記2 - ここは仙人の住む里か
#0150.武当山旅行記3 - 武当山で迎える朝
#0151.武当山旅行記4 - 南岩から金頂へと登っていく
#0152.武当山旅行記5 - 神秘の灰が降る金頂
#0153.武当山旅行記6 - 金頂で大吉を引く
#0154.武当山訪問記7 - 五行糕を食べてからロープウェイで下山する
#0155.武当山旅行記8 - 太子坡、そして下山



 宿で少し休んでから、宿周辺の南岩を散策する。南岩宮と呼ばれていて、唐代以降、たくさんの道士が修行にいそしんだといい、最盛期は1000人にも達したそうである。

IMG_3716
【2016.2.15】南岩宮

 仙人でも現れそうな絶景だ。バスで上ってきて、すぐ、この景色に出会えてしまう我々は幸せなのだろうか、不幸せなのだろうか。昔だったら麓から30kmもの山道を登ってこないと出会えなかった景色、もっとありがたいものだったに違いないし、この秘境を修行の場として選んだ理由もよく分かる。
 現在も武当山ではたくさんの人が道教、太極拳(武当拳)の修行に励んでいて、中国全土、そして世界中から人がやってくるそうだが、南岩宮自体は観光地となっていて道士のすがたは見られなかった。現在は山中に数ある、武術学校などに修行の場は移されているようだ。

IMG_3711【2016.2.15】南岩宮

 左の赤い建物が「玄帝殿」で、右の崖に張り付いた建物が「石殿」だ。
 それにしても、こうも際どいところに建てたものである。人間には、限界、際どいもの、できるかどうか分からないものに挑もうとする習性があると思う。その習性は、文明を高度に発達させてきたわけだけれども、この南岩宮もまた文明の痕跡の片鱗なんだろう。驚かされる。

IMG_3721【2016.2.15】南天門

 南天門という門をくぐる。現在、南岩宮にある建築は明代に建てられたものが多い。

IMG_3725【2016.2.15】南岩の景色

 秋の紅葉シーズンにやってきたら、とても美しいんだろうなと思う。もし再訪するならば、秋に再訪しようと心に決める。

IMG_3732【2016.2.15】南岩の景色

 山道を歩いていく。山道といっても、階段がよく整備されているので、登山靴は必要なさそうだった。

IMG_3737【2016.2.15】南岩の景色

 こ貴重な文化財であるから使用しないでくださいとの説明があったが、どう使用するんだろう。よくみると建物の真ん中が黒く煤けているから、香炉だろう。ここで、紙製の供え物を燃やしていたのだと思う。最近は燃やしているのだろうか。
 玄帝殿へと続く入口をくぐる。

IMG_3738【2016.2.15】玄帝殿

 入どっしりと構えた玄帝殿が姿をあらわす。時の重みを感じさせ、人を圧倒する。やはり、中国はすごい。こういう重厚さは、日本の文化財にはあまりみられないものだと思う。

IMG_3752【2016.2.15】南岩の景色

 玄帝殿の裏手に、崖に張りついた石殿がある。南岩に現存する建物のうちもっとも古く、元代の建築物だという。

IMG_3756【2016.2.15】南岩の景色

 切り立った崖に挟まるように建てられている。

IMG_3758【2016.2.15】南岩の景色

 なかなか面白かったのがここにある「龍頭香」である。龍頭香は石殿から、武当山の金頂に向かって伸びていて、先に置かれた香炉でお香を焚けるようになっている。この香炉は幅30cmで、断崖絶壁を約3m伸びた先に置かれていて、これもまた人間の際どさに挑戦したがる習性ゆえに作られたものなんだろう。

IMG_3760【2016.2.15】龍頭香

 しかし、この龍頭香、明代に作られて以降、道士が誤って落下する事故し命を落とす事故が度重なったという。そのため17世紀、清代に、天の神様は慈愛に溢れている。重要なのは心だ。お香を焚くために、宝のように大切な命を粗末にすることを天の神様は望んではいらっしゃらないと文句とともに、お香禁止令が降りたそうだ。人間というのは面白い。その禁止令は400年近くが経った今も守られている。
 午後5時になると、寺院や登山道が閉じられ、宿へと戻ることとなった。せっかくだからおいしいものを食べようと、南岩にある一番、高級そうなホテルの食堂で食事をすることにした。(高級そうだったが、夕食は日本円でたったの500円ほどにしかならなかった。)

IMG_3775【2016.2.15】わかめと卵スープ

 わかめと卵スープ。

IMG_3776【2016.2.15】麻婆豆腐

 それから、麻婆豆腐。中国で麻婆豆腐を食べたのは初めてだった。「麻」という文字の通り、舌がピリピリと痺れる感覚があった。日本の麻婆豆腐は、それはそれでおいしいけれども、「麻」婆豆腐を名乗ることはできないように思う。

IMG_3777【2016.2.15】炒め物

 炒め物。お酢の味が強くきいていた。 味はホテルの水準からすると、もう少しよくてもいいのではないだろうかという感じではあった。
 武当山の山中では、夜間、特にすることがない。夜の7時には宿に着いて、シャワーを浴びてから、さっさと寝てしまった。その日は朝5時前に起床していたから、寝つきはよかった。夜間にすることが何もない環境というのは、規則正しい生活をとり戻すにはうってつけの環境だと思う。

■武当山旅行記
#0148.武当山旅行記1 - 武当山へと入山する
#0149.武当山旅行記2 - ここは仙人の住む里か
#0150.武当山旅行記3 - 武当山で迎える朝
#0151.武当山旅行記4 - 南岩から金頂へと登っていく
#0152.武当山旅行記5 - 神秘の灰が降る金頂
#0153.武当山旅行記6 - 金頂で大吉を引く
#0154.武当山訪問記7 - 五行糕を食べてからロープウェイで下山する
#0155.武当山旅行記8 - 太子坡、そして下山



 武当山駅は周辺の市街地からやや離れたところにあり、また、武当山の入山口からも離れたところにある。まずはこの駅から、武当山の入山口にあたる游客服務中心(旅行客サービスセンター)まで行かなくてはならない。202路あるいは203路のバスを利用すると、約1時間で到着する。タクシーを利用すれば、30分以内で到着できる。
 
IMG_3688
【2016.2.15】武当山

 武当山の駅前には、宿やら、食堂がある。前に進むと、突然、「パンッ、パンパンッ」という破裂音とともにわっと煙が上がった。ああ、春節の爆竹か。今まで、春節の爆竹というものを体験したことはなかったけれども、その破裂音と煙が何であるかはすぐに分かった。

IMG_3689【2016.2.15】爆竹

 アスファルトの上で爆ぜているのである。一連の破裂が終わると、お店の中からこどもが出てきて、破裂が終わり煙をもくもくと上げている爆竹を不思議そうに眺めにやってきた。その爆竹にまだ、燃えきっていない火薬がいくらか残っていたらしい。突然、パンッと一回だけ大きな音を出して破裂する。その様子に驚いて、こどもは勢いよくお店の中へと戻っていってしまった。
 旅行期間中、都市部で春節に街頭で火薬などの引火性のものに着火することを禁止するとの内容の通達がなされているのをよく見かけた。武当山駅周辺はどうやら「都市部」には当たらないからいいのだろうけれども、あまり安全とはいえないアスファルトの上で爆ぜる春節の爆竹は、もしかしたら、過去の景色になってしまうのかもしれない。

IMG_3691【2016.2.15】爆竹

 バスに乗っていこうと思ったが、時間がかかりそうだし、白タクの青年が連れてってやると積極的にアピールしてくるのでその情熱に負けて、乗ってしまうことにした。30分もかからない。
 武当山へと入山する全ての観光客は入山口にあたる游客服務中心でバスや乗用車を降り、入山料を払い、入山することになる。

IMG_3694【2016.2.15】游客服務中心

 游客服務中心には、飲食店やお土産屋さん、ホテルなどが立地していた。ただ、武当山を観光して回るのに、游客服務中心の周辺で宿泊することは、あまり効率がいいとは思えない。游客服務中心はあくまでも入山口であって、世界遺産に指定されている道教寺院などがある地域はここからさらに30km程度進んだ山中にある。山中にも多くの宿泊施設があるので、そちらに宿泊するのがよいだろう。

IMG_3695【2016.2.15】游客服務中心

 入山料は240元(約4184円)である。初め、245元という価格が提示されたが、5元は山中の事故に備えた保険料だというので、こちらは省くことができる。

入山券表

 車が当選するという、くじがついていたけれども、外国人観光客にはあまり嬉しいものではない。

入山券裏

 なおチケットには当日有効と書いてあるが、あくまでも入山料を払った日に入山ゲートを通過しなさいということであり、山中に宿泊し翌日、あるいは翌々日まで留まることは問題がない。
 域内は、乗用車の乗り入れが禁止されており、観光客は専用のバス(観光車)で各ポイントを移動することになるが、このバスはフリーで利用ができる。ただし、金頂や紫霄宮、ロープウェイのチケットは入山料には含まれておらず、別途、支払う必要がある。

武当山地図

 観光車の運行経路は以下のようになっている。

游客服務中心 - 南岩 26km 50分
游客服務中心 - 瓊台 25km 45分
游客服務中心 - 太子坡 12km 20分
太子坡 - 瓊台 15km 30分
太子坡 - 南岩 15km 30分

 南岩に宿を予約しておいたので、まずは、南岩に向かうことにした。やってきたのは、游客服務中心・太子坡間のシャトルだったので、太子坡で南岩行きに乗り換えた。乗り物酔いがひどい人は、酔い止め薬が必須だと思う。バス停に、吐瀉物の痕跡がいくつもあるのをみると、いくら屈強な中国人とは言えど、酔う人は酔うみたいだ。なお、山中の宿は、南岩や南岩から金頂に向かう道、瓊台に多くあり、金頂付近にもいくつか存在する。

IMG_3703【2016.2.15】南岩

 ついに南岩に到着!

IMG_3705【2016.2.15】南岩

 いい景色だ。

IMG_3707【2016.2.15】南岩

 標高は1000mを超えているはずだったが、さほど寒くはなかった。

IMG_3708【2016.2.15】宿

 これが予約しておいた宿、武当山建国飯店南岩客桟である。1階が入口のようになっていて、地下1階が客室となっていた。清潔だったし、暖房がよくきき、シャワーからもしっかり温かい水が出て、ツインルームが199元(冬季特価)だったので申し分なかった。
 世界遺産に登録されていてたくさんの観光客がやってくるだけあってか、観光インフラはかなり充実しているという印象だった。

■武当山旅行記
#0148.武当山旅行記1 - 武当山へと入山する
#0149.武当山旅行記2 - ここは仙人の住む里か
#0150.武当山旅行記3 - 武当山で迎える朝
#0151.武当山旅行記4 - 南岩から金頂へと登っていく
#0152.武当山旅行記5 - 神秘の灰が降る金頂
#0153.武当山旅行記6 - 金頂で大吉を引く
#0154.武当山訪問記7 - 五行糕を食べてからロープウェイで下山する
#0155.武当山旅行記8 - 太子坡、そして下山



↑このページのトップヘ