地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

2016年12月

 ルーアン美術館(Musée des beaux-arts de Rouen)は、ルーアン=リヴ=ドロワ(Rouen-Rive-Droite)駅から徒歩7分ほどの距離に位置している。

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【2016.11.20】ルーアン美術館

 入場料は5ユーロ(約600円)だと思っていたが、入場料はとられず、「0.00€」と印字されたチケットを出してくれた。事前に得ていた情報が間違っていたのか、26歳未満は無料だそうだから、僕が26歳未満に見えたということなのか、事実は分からない。
 荷物を入口横にあるロッカーに預けてから、展示室へと入る。

IMG_7400【2016.11.20】美術館内部

 1801年に開業した歴史のある美術館で、現在の建物は1880年代に建てられ1994年にリノベーションがおこなわれたものだという。たくさんの印象派の傑作を所蔵している、フランスを代表する地方美術館であり、60もの常設展示室に絵画が展示されている。その中には、日本で人気を博すモネによる作品も含まれている。

IMG_7401【2016.11.20】美術館内部

 初めて体験する、フランスの美術館であったが、日本のものとはだいぶ異なる。

IMG_7433【2016.11.20】美術館にて

 三脚、フラッシュを使用しなければ写真やビデオ撮影が可能だし、手で触れないかぎりならば、作品に接近ができる。展示室の監視員はおしゃべりに耽っていて騒がしかったりするが、むしろそれが、美術館という施設自体がお高くとまった感じにさせないため、それはいいと思う。また、館内のカフェやミュージアムショップの売り上げを主な収入として、入場料を無料にしたり安価に抑えることで、市民と美術の接近性を高めているように思われたが、公共施設としての美術館の在り方として望ましいもののように思う。市民が美術館を気軽に訪問できる環境にあってこそ、美術は普及するものだと思う。
 一方、日本の美術館は、カメラの使用が禁止されていたり、スマートフォンの操作が禁止されていたり、大きな声で話すことが禁止されているなど、あまりにも「禁止事項」が多いことから、美術館という施設自体がお高くまとまっているように感じられ、どうも接近しにくいのである。そして市民にとって「美術」自体をも接近、参加しにくい、何か高貴なものにしてしまう。

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 さまざまな絵画が展示されているが、例えばノルマンディー地方やルーアンを主題とした絵画も展示されていて、その土地の歴史や風土を知ることができる。

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 しかし、作品のタイトルや説明文には全て「フランス語」の表記しかないため、フランス語ができない限り、タイトルや説明文を通して何かを知ることはできない。「我々フランスについて興味があるなら、まずはフランス語でも勉強しろ」という傲慢さを感じるのである(笑)

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 フランスはフランス語を分からない限り、知るのが難しい、そういう印象を受ける。
 不思議な作品がある。

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 17世紀頃の作品だったと思う。

IMG_7416【2016.11.20】金属の円柱にうつる作品

 金属の円柱を中心においてこそ、作品が見えてくるのである。

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 作品の多くは、キリスト教史やヨーロッパ史、フランス史に精通していない限り、その内容を理解するのは難しい。

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 残念ながら、キリスト教史についてもヨーロッパ史についても、僕は知識がないから、その写実性に感嘆することはできたとしても、その内容はよく分からない。

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 それでも、美術館の在り方や、展示の在り方については興味深かった。

IMG_7429【2016.11.20】展示室にて

 展示のされ方が日本とは大分、違うからだ。

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【2016.11.20】展示室にて

 あまりにもたくさんの展示室があって、なかなか見切れない。

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 少年愛的なエロティシズムを感じる。

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 思えば、絵画の展示位置が日本よりも高めになっていて見やすかった。身長181cmの僕にとって、日本の標準的な美術館の絵画の展示位置は低すぎる。
 最後に、ミュージアムショップまでしっかりと堪能した。ちょうど美術館の展示物をうまく「おさらい」できるようになっていて、よい。フランスにおける美術館という概念に感心した、ルーアン美術館訪問だった。

■ルーアン美術館
 公開時間 : 午前10時~午後6時
 定休日 :  火曜日


 ルーアンの中心駅、ルーアン=リヴ=ドロワ(Rouen-Rive-Droite)駅に到着する。

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【2016.11.20】ルーブル駅にて

 駅舎は、1928年に竣工した歴史のある建物だという。

IMG_7380【2016.11.20】ルーアン駅前

 底冷えする。

IMG_7387【2016.11.20】ルーアン駅

 駅は、ルーアンの市街地の北側にあって、この駅からセーヌ川にまで下る緩やかな斜面地に、ルーアンの旧市街が広がっている。

IMG_7386【2016.11.20】ルーアン駅前

 ルーアンはセーヌ川の下流域にある都市で、もともと、河川港として9世紀ごろから都市の建設が始まったという。現在は、ノルマンディー地域圏の首府であり、都市圏人口は約50万人の都市だ。
 駅から南側へと、ジャンヌ・ダルク通り(Rue Jeanne d'Arc)と名付けられた通りを下っていく。

IMG_7389【2016.11.20】ジャンヌ・ダルクの塔(Tour Jeanne d'Arc)

 もともとある城の塔だったが、ジャンヌ・ダルクが幽閉され拷問を受けた建物であったことから、ジャンヌ・ダルクの塔(Tour Jeanne d'Arc)と呼ばれるようになったという。現在は城は残存せず、塔だけが残っている。
 内部は見学が可能だが、訪問時は日曜日の午前中であったため開いていなかった。

■ジャンヌ・ダルクの塔
 住所 : Rue Bouvreuil, 76000 Rouen
 公開時間 :
  平日・土曜日 - 午前10時~午後12時半, 午後2時~午後6時
  日曜日 -  午後2時~午後6時半
  なお、冬季(10月1日から3月31日まで)は1時間早く、それぞれ、午後5時、午後5時半に閉まる。

IMG_7391【2016.11.20】駅周辺

 街にはあまり活気があるように感じられなかったが、日曜日でみなが休んでいて、底冷えする朝だったから、どうであったに違いない。

IMG_7393【2016.11.20】ジャンヌ・ダルク通り

 営業中の店舗はこれといってなかった。

IMG_7394【2016.11.20】食器店

フランスでは「TOKYO」という、和食器のような絵柄をつけた食器のブランドを時々、見かける。それは日本のブランドではなく、日本の美的感覚に刺激を受けた西洋人がヨーロッパで始めたブランドであると思われる。

IMG_7395【2016.11.20】ジャンヌ・ダルク通り

 一つ目の目的地、ルーアン美術館へと向かう。 


 フランス滞在3日目。パリから北西に120kmほど離れたところにある、ルーアン(Rouen)へと日帰り旅行に行くことにした。ルーアンへ向かう列車の乗車券は、インターネットで事前に購入しておいた。(#0612.フランス国鉄(SNCF)の乗車券のオンラインでの購入方法)
 列車は午前8時50分にパリのターミナル駅のひとつ、サン・ラザール(Saint-Lazare)駅を出発するもので、行きの乗車券は11ユーロ(約1320円)、帰りの乗車券は15ユーロ(約1800円)、往復26ユーロ(約3120円)で決済した。
 サン・ラザール駅はパリで2番目に乗降客の多い駅で、ノルマンディー地方へと向かう列車が発着する。

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【2016.11.20】サン・ラザール駅にて

 午前8時50分の列車に乗るために、まだ日ののぼらないうちから出かけなくてはならなかった。その日の日の出時刻は午前8時8分だった。外には冷たい雨が強く降っていたが、傘を持っていなかったので地下鉄の駅まで駆けこまなくてはならなかった。
 パリは天気が移ろいやすく、朝から晩までずっと雨が降るということは稀だというし、天気予報は晴れると言っていたから、悲観はしていなかった。
 サン・ラザール駅に行くのに思ったよりも時間がかかって、朝食代わりにするつもりだったパンを買えなかった。到着したのは、発車する3分前だった。

IMG_7258【2016.11.20】車窓

 列車は出発する。2階席に座ると、外の景色がよく見える。

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  ラ・デファンス(La Défense)の高層ビル群の近くを通り過ぎていく。

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 雨脚が少しずつ、弱まっていく。

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 郊外の景色が広がる。

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 しばらくすると雨がやみ、青空がのぞき始める。

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 インターネットで決済した乗車券を、プリントアウトすることはしなかった。車掌が検札にやってきたら、スマートフォンで購入した時の決済画面を表示すればよいと思った。しかし結局、車掌が検札にやってくることは一度もなかった。

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 天気はあっという間によくなった。

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 乗客は少なく、列車は空いていた。

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 列車は途中、停車することはなかった。

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 しばらくすると郊外の風景は途切れ、田園風景となった。

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 木々は葉を落とし、いよいよ冬といった様相だった。

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 しかし、フランスの枯木は色彩がふわっとしていて、柔らかいと思う。日本の枯木から感じられるような、冷たい冬の厳しさというものが、あまり感じられなくて興味深い。

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 丸く、ころころとしたヤドリギたちが、冬の枯木立の景色を可愛らしいものにしている。

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 列車は線路に落ちた枯葉を、舞い上げながら走っていく。 

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 舞いあげられた木の葉が後ろの方へと流れていく様子を、列車の中から眺めながら、ルーアンへと向かう。
 列車は70分ほどで、ルーアンへと到着する。そして我々を下ろした列車は終着駅のル・アーブル(Le Havre)に向け、再び動き始めたのだった。


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