地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

2017年01月

 (過去訪問した、イスタンブール、グルジア、アルメニアを「ヨーロッパ」という区分に含めなかった場合に)初めてのヨーロッパ訪問となったパリ旅行を、総括してみようと思う。

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■旅行費用
 航空券 : 56400円
 現金 : 398.3ユーロ(約47800円)
 カード支払い : 54900円

 合計 : 159100円

 航空券代と11泊12日に渡ってフランスで消費したお金を合わせると15万9100円ほどになった。パリでは友人が泊めてくれているからと、いろいろなものを気前よくおごっていたためか、友人宅に滞在していたにも関わらず、たくさんのお金を使ってしまったようだ。また、商品が魅力的な見せ方をされていて、購買意欲がくすぐられた。
 なおこの費用には、乗継地のソウルで消費した金額、ソウルやパリの友人たちへ日本からお土産として持っていったものの代金を含んでいない。

■パリの物価
 外食の費用に関していえば、パリの外食の費用は東京よりも5割ほどは高いと考えられる。しかし、スーパーなどで販売されている食料品(肉、卵、乳製品、野菜等)は商品にもよるが、日本よりも安いため、外食をしなければ、食費は低く抑えることができる。関税のかからないEU圏内における食料品の移動が、食料品価格を安価に維持しているようである。(例えば、ポーランド産の白菜はとても安かった)
 日用品は、100円ショップのようなものがないから、低価格の製品が充実しているといった印象はなかったが、中価格以上の製品に関していえば、日本とは大きな差がないように思う。
 交通費は、パリ市内の移動に関していえば、東京都心を移動することと大きな違いはないが、高速鉄道についていえば割引制度が充実しており、日本の高速鉄道よりもずっと少ない負担で移動ができる。
 宿泊費については友人宅に宿泊していたため、詳しいことは分からないが、東京と同等といった印象があった。
 博物館や美術館、観光地の入場料金についていえば、26歳未満の学生については学割が充実していて、中には無料で入場できる施設もあるが、一般の大人の料金に関していえば、日本よりは高めである。
 分野ごとに物価の高低はあるが、フランスでは特に人の手がかかっているものが高い傾向があるといえよう。

■パリの治安
 貴重品の管理には細心の注意を払う必要がある。特に、日本人や韓国人、中国人といった東アジアの人々や、北ヨーロッパの人々がターゲットになりやすいため、フランス人が「問題がない」とは言っても、厳重注意をしなくてはらない。外出中は、少額の現金とカードだけを持ち歩くようにするべきである。特に、地下鉄駅構内、地下鉄の列車内、エッフェル塔周辺やモンマルトルといった有名観光地が危険である。地下鉄では、車両のドアの付近に立つべきではないし(列車のドアがしまる直前に、駅のホームから手を伸ばして、ターゲットのかばんやポケットから金目の物をする)、観光地で英語で声をかけてくる人々については警戒をする必要がある。
 テロについていえば、市民がテロにおびえて暮らしているといったようすは見られなかったが、公共施設や商業施設など人が集まるところには、手荷物検査をはじめとしたセキュリティチェックがある。シャンゼリゼ通りでは、マクドナルドですら手荷物検査を行うし、鉄道駅には、銃器をもった軍人のすがたが見られるなど、テロ対策には抜かりがない。
 また、パリ北駅周辺など、パリ市内北部の黒人、アラブ人の集住地域は治安がよくないとされている。

■パリの言語
 パリでは英語がよく通じる。しかし、「フランス語も英語も同じヨーロッパの言語なのだから、もっとできてよいはずだ」とか「英語の、フランス語訛りが強すぎる」といった感想は、抱くかもしれない。
 観光地の案内板は、フランス語の説明しか記載されていない場合も多く、フランス語を分からずにしてフランスのことを理解することは難しいといった感想を抱くことになるだろう。

■パリの気候
 11月中旬になるとすでに東京の真冬と同等の寒さで、曇りがちで、日照時間が少ない。また、日の出時間が午後8時、日没時間が午後5時であるなど、日が昇っている時間が短い。

■パリの食事
 味の濃いフランス料理は好みが分かれるだろうが、パリは多人種多民族が暮らす国際都市であることから、さまざまな国籍の料理が存在するため、フランス料理が口に合わなかったからといって悲観する必要はない。外食はどの国籍の料理であっても、前菜、メイン、デザートといった順序で出てくることが多いため、注文時にはその点を頭に入れておく必要がありそうだ。

■パリの人々
 不親切な人々もいれば、親切な人々もいる。しかし、徹底的に個人主義が浸透しているという印象があって、人々はあまり他人に関心を見せようとしない。だから、旅行者には時に、冷たく、そっけないように感じられるだろう。
 また、公務員の仕事からはやる気が感じられないことも多々あり、空港職員や鉄道職員の態度にはあまりよい印象を抱けそうにもない。

■パリ症候群
 そもそも、パリに対する憧れはなかったから、そういうものを発症することはなかった。

■公園が魅力的である
 僕がパリで一番魅力的に感じたのは、パリ市内にある大小の公園である。次回、パリを訪問することがあったら、公園や広場を中心にめぐってみたい。(次点は百貨店)

■なんだかんだいって「人間」が暮らしているところである
 たくさんのことが日本とは異なるように感じられるだろうが、パリもなんだかんだいって「人間」が暮らす、喜怒哀楽の渦巻くところであるから、ありのままのパリを受け入れればよいと思う。

■海外生活を通して自分の可能性に挑戦している人々を羨ましく思う
 パリは国際都市であり、多民族多人種社会である。また、たくさんの外国人が生活している。僕も2人の友人が、パリで留学生活を送っている。
 パリ滞在中、外国で自分の可能性に挑戦している彼らのすがたを見て、彼らのことを羨ましく思ったし、それは僕の今後の人生計画に、何らかの影響を与えるだろうと思う。   


 パリから羽田空港に到着し、家へと向かう。途中、京急蒲田駅からJR/東急蒲田駅へと乗り換える。12日前に出発した時はまだ、クリスマスイルミネーションがなかった東京にも、クリスマスイルミネーションが灯り始めた。

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【2016.11.29】JR蒲田駅前にて

 東京の街にもパリと同様、小さな広場や公園は多いように思う。

IMG_0480【2016.11.29】JR蒲田駅前にて

 しかし、「駅前は禁煙地区です。歩きタバコは区内全域で禁止です!清潔で美しい大田をつくる会」といった、あまり美しいとは言えない看板が置かれていたりして、景色が美しいとは言えない。
 パリから戻ってくると、東京という都市が情報過多な都市のように思う。広場にある看板だけではなく、広場を囲う建物にもたくさんの看板があって、「広告」の中に生かされているように感じる。
 また、禁止事項が多い。煙草を吸うな、球技をするな、危険物を持ち込むな、ゴミを捨てるな、人々を「指導」するよう門限が都市に溢れている。注意をうながす文言や、放送も過多だと思う。エスカレーターに乗ると、「足元にご注意ください」の放送が、4か国語で放送されている。目に入る文字という視覚的情報のみに限らず、耳に入る聴覚的情報も多い。だから、常に誰かの監視の下にあるような、そういう窮屈さを感じてしまう。
 情報過多である都市空間には、それなりの魅力はあるかもしれないけれども、パリから帰ってくると、違和感を感じざるを得ない。

IMG_0476【2016.11.29】JR蒲田駅前にて

 また、空気はPM2.5こそあまりないけれども、水の臭いだとか、食べ物の臭いがパリよりも強い。パリで時折感じられるような、アンモニア様の臭いだとか、香水の混じった臭いは感じられないんだけれども、東京には東京特有の臭いがある。
 旅行に行けば、旅行先についての理解はもちろん深まるけれども、ふだん暮らしているところのすがたを客観視することができるようになる。それもまた、発見であり、そういう種類の発見があるから、旅行はやはり楽しいのだと思う。


 パリから羽田空港まで、約12時間の移動が始まる。

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【2016.11.28】シャルルドゴール空港にて

 それは、ボーイング787だった。ボーイング787は2011年の秋に運用が始まっていて、すでに運用開始から5年が経過していたが、搭乗するのは初めてだった。

フランス旅行(広域)

 機内は大半が、日本人だったと思う。フランス人、その他ヨーロッパの利用客は少なかった。搭乗してしばらくすると、航空機は離陸する。窓側に座っていたから、夜景がみえた。11日間を過ごした思い出の土地が、遠ざかっていく。パリの友人たちはあの、暖色の夜景の中で暮らしているのだろうが、僕はもうあの中にはいない。パリを、思い出の土地と思えるようになった。そういう旅行ができて、幸運だったと思う。
 2時間ほどしてから、機内食が配られた。

IMG_0428【2016.11.28】機内食

 主食は、じゃがいものである。これはなかなか、おいしかった。

IMG_0431【2016.11.28】アイスクリーム

 食後には、バニラアイスクリームが配られた。パリ羽田便、エコノミークラスであるにも関わらず、機内食がなかなか豪勢である。こういうサービスをしているから、航空券価格が高いのだ!
 機内では、「君の名は。」という映画を見ることができたから、それを見ていた。2016年の日本で、もっとも興行的な成功を収めた映画だったが、映像が美しいということを除いて、何がその興行的な成功をもたらしたのか、理解に苦しんだ。それは僕にとって現実性に乏しく、感情移入ができなかった。アニメーションについて、現実性を議論することに意味があるのか、それは難しい問いではあるが、登場人物の心理描写や感情表現、それから行動に妥当性がなければ、共感、それから感動するには至らない。それから、コロンビアにおける麻薬戦争に関するムービーを一本みる。地雷原を走る子どもたちのすがたなどが描写されていたし、複数の左翼ゲリラや麻薬組織の闘争に巻き込まれ、子どもたちを含めた罪なき村人が殺戮されてしまうという結末をむかえ、僕はすっかり落ち込んでしまった。
 しばらく目を閉じる。目を開けると、夜が明けていた。離陸から9時間15分が経過していて、残り2時間40分ほどで到着するというところだった。

IMG_0438【2016.11.29】ロシア上空にて

 まだ、ロシア上空にいる。ロシアはどれだけ大きいのだろうか。
 着陸2時間半前になって、2回目の機内食が配られた。

IMG_0440【2016.11.29】二回目の機内食

 航空機はまっすぐと進んでいたが、ハバロフスク上空に入り、進行方向を変えた。

IMG_0443【2016.11.29】ハバロフスク上空

 飛行機は大きく旋回する。

IMG_0445【2016.11.29】ハバロフスク上空

 11月末だったが、すでにすべてが凍りついている。東京到着まで残り、2時間15分ほどだった。東京から2時間15分ほどのところにこういった都市があるとは知らなかった。凍りついていることも驚きだったが、何もない、極東ロシア、シベリアの都市に突然、こういった大都市が出現することも驚きだった。
 そして、パリ離陸の10時間10分後、ついにユーラシア大陸の東端が現れる。パリから続いていた陸地がここで、ついに途切れる。ユーラシア大陸は、巨大である。

IMG_0448【2016.11.29】ユーラシア大陸から日本海へ

 日本海を突っ切り、ついに日本上空へとやってきた。

IMG_0455【2016.11.29】富士山

 長い長い、空の旅だった。

IMG_0459【2016.11.29】着陸態勢に入る

 12日ぶりに目にする、日本だった。

IMG_0461【2016.11.29】東京湾上空

 無事に帰ってこれたことを、嬉しく思う。

IMG_0465【2016.11.29】羽田空港に着陸する

 そして、着陸する。

IMG_0473【2016.11.29】羽田空港にて 

 もう、日が傾き始めていた。パリと東京には、8時間の時差がある。しばらく、時差ボケが続きそうだった。
 すぐに入国審査が終わり、荷物をうけとり、羽田空港をあとにした。 


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