地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

2017年06月

 グリニッジ天文台のある丘を降りて、テムズ川へと向かって歩いていく。

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【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 曇天の時間が長いけれども、3月にロンドンを旅行するというのは悪くない。

IMG_7914【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 住宅それぞれはみな、レンガでできていて、似たり寄ったりに見えながら、よく見てみると形が違う。

IMG_7916【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 ほぼ同じように見えても、窓の形や扉の形が違うのは、興味深い。都市が人間によって、住みこなされていると思う。

IMG_7920【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 煙突がみえる建物は、グリニッジ発電所(Greenwich Power Station)だ。
 1902年に建造された古い発電所で、かつてはテムズ川から運ばれた石炭によって発電をした。しかし、ロンドン近郊にあって石炭を燃やすことが大気汚染や公害につながることから、のちに石油、あるいはガスによる発電に転換されている。
 ある駐車場の裏に、桜の花が咲いているのに気が付いた。

IMG_7928【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 2017年、初めてのお花見は、どうやらロンドンになりそうだ。

IMG_7924【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 ロンドンに、桜を見に来ることになるとは思わなかった。

IMG_7927【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 3月前半だから、サハリンほどの緯度にあるロンドンで、花を見ることには少しも期待していなかった。

IMG_7926【2017.3.11】グリニッジの住宅街にて

 ソメイヨシノとは違う品種だから、早く咲くのだろうか。
 テムズ川沿いに歩いていくと、旧王立海軍大学の建物が見えてくる。

IMG_7931【2017.3.11】旧王立海軍大学

 旧王立海軍大学は1700年前後に建てられて、イギリスのバロック様式の公共施設としては最大の規模を誇るという。

IMG_7935【2017.3.11】旧王立海軍大学

 実は、グリニッジの街並み、テムズ川から旧王立海軍大学やグリニッジ天文台を含む地域は、水運に伴って都市が発展した顕著な例として、世界遺産に登録されている。

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【2017.3.11】テムズ川

 近くには、カティサーク(Cutty Sark)という帆船が展示されている。

IMG_7940【2017.3.11】カティサーク
 
 1869年に建造された帆船だ。
 かつて中国からイギリスへと、たくさんの茶葉が運ばれていた。輸送に時間がかかれば、鮮度が落ちるものだから、いかに速く運ぶかということが重要視され、最初に届けられた一番茶は高値で取引されたり、賞金が与えれれ、富と栄誉を手にすることができた。
 そういう時代に、開発された帆船なのである。南アフリカの喜望峰を経由して、19世紀初頭には1年半あるいは2年をかけてイギリスへと輸送されていたものが、4か月ほどで届けられるようになった。

IMG_7937【2017.3.11】カティサーク

 カティサークはイギリスが莫大な富を築いた、貿易による歴史の象徴なのである。
 なおカティサークが建造されてからすぐに、ヨーロッパと中国間の貿易ルートはスエズ運河の開通によって、喜望峰ルートは廃れてしまう。あまり風がふかないスエズ運河ルートは、帆船で進むことができなかったため、蒸気船の時代へと転換してしまい、カティサークの活躍の時代はすぐに、終わってしまった。

IMG_7934【2017.3.11】テムズ川

 ここには、船着場がある。
 ここから水上バスに乗って、ロンドン市内へと戻ることにした。


 グリニッジとは、地域の名前である。
 グリニッジ天文台、グリニッジ公園とはその地域の名前からとられている。

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【2017.3.11】グリニッジ公園にて

 グリニッジの綴りは、「Greenwich」となる。
 そう書くと「グリーンウィッチ」が正しい発音ではないかと思われるが、それはアメリカ式の発音であって、イギリス式では「グリニッジ」、「グレニッジ」、「グリニッチ」、「グレニッチ」といった発音になる。
 たくさんの桜が咲いていた。

IMG_7877【2017.3.11】桜

 そう、春なのだ。

IMG_7880【2017.3.11】春霞

 空はまだ少し、霞がかっている。
 丘の上のグリニッジ天文台も、少しばかりか霞んで見える。

IMG_7882【2017.3.11】グリニッジ公園にて

 グリニッジ天文台がなかったとしても、その公園だけで来る価値があると思う。

IMG_7888【2017.3.11】グリニッジ公園にて

 グリニッジ公園を降りていく。

IMG_7890【2017.3.11】グリニッジ公園にて

 ある程度の高さまで降りてくると、テムズ川の水面が見えなくなる。

IMG_7892【2017.3.11】グリニッジ公園にて

 この日はとても暖かく、気温は20度近くまで上がっていた。
 すでに、半袖で歩いている人もいた。

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 とても暖かかったがまだ、木は葉を落としたままだった。

IMG_7899【2017.3.11】グリニッジ公園にて

 グリニッジ公園周辺は、閑静な住宅街である。

IMG_7901【2017.3.11】グリニッジ公園周辺

 その閑静な住宅街で、アカシアの花が存在感を放っている。

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 フアアカシアと呼ばれ、ミモザとも呼ばれる。

IMG_7908【2017.3.11】アカシアの花

 まだ春の始まりだったから、春が深まるとより、たくさんの花で満ちるに違いない。

IMG_7910【2017.3.11】ロンドン

 東京よりもたくさんの花が咲いていて、なんだか、春の訪れが東京よりも早いように感じられる。


 東経と西経を分かつ、グリニッジ子午線を見にるために、入場料を払ってグリニッジ天文台へと入る。

グリニッジ天文台入場券


 学生ではなかったが、勝手に学生だと判断されて、学生料金の7.5ポンド(約1050円)の入場券を出された。
 それからスタッフが「韓国の済州島の海女に関する興味深い展示が、近くの博物館で見られるわ。ぜひ見ていくべきよ」と言った。僕が、韓国からの学生に見えたのだろうか。

IMG_7855【2017.3.11】グリニッジ天文台にて

 中は、博物館となっている。

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 1675年に設立された、古い天文台である。

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 1851年に当時、天文台長だったエアリーがここに子午環を設置し、それをもとにした観測がはじめられた。

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 1884年10月に、世界で共通する「経度0度」を定める国際会議がアメリカのワシントンD.C.でおこなわれ、ググリニッジ天文台を経度0度とすることが多数決で定められた。

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【2017.3.11】グリニッジ子午線

 上の写真の金属の線が経度0度である。この線をまっすぐ進むと、北極へと至る。
 そして、この写真の右側が東経であり、左側が西経となる。この写真は、右半身を東経に置き、左半身を西経に置いて、撮られた写真である。

IMG_7863【2017.3.11】グリニッジ子午線

 たくさんの人が、この東経と西経を分かつ線の上に立って写真を撮っていた。
 ちなみに、僕が「西経」の領域に足を踏み入れるのは、今回のロンドン旅行が初めてであった。

IMG_7872【2017.3.11】グリニッジ子午線

 たくさんの日本人観光客がいるのを見るに、日本人はグリニッジ天文台が好きらしい。 

IMG_7870【2017.3.11】グリニッジ天文台にて

 いくつか、興味深い展示があった。

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 まず一つは、この地点で携帯電話のGPS機能を用いても、必ずしも経度0度が表示されないということである。
 グリニッジ子午線によって定められたもとの経度と、のちに新しく定められた、完全には球体ではない地球の歪みを考慮にいれて測定された経度には少しのずれがあって、携帯電話には後者が表示されるために、完全に経度0度にはならないそうだ。こちらで0度を表示させるためには、このグリニッジ子午線から100mほど東に移動する必要があるそうだ。

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 また、天文台では、天文台の上にある球体のものをあげたり落としたりすることで、テムズ川の船人に時間を告げたりもした。

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【2017.3.11】ロンドンの位置

 地図でロンドンが、東経と西経を分かつ地点として誇らしげに載っている。

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【2017.3.11】グリニッジ天文台から

 館内の展示を見ていると、ひとつ、無理難題があることに気付いた。

グリニッジ天文台課題

 「あなた自身の緯度経度をはかる道具をデザインしてみてください」

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【2017.3.11】グリニッジ天文台にて
 
 日本人が一人、この無理難題に取り組んでいたが。
 イギリスで生きるには、想像力がたくましくなくてはならないのだろうか。


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