上海都心を歩いていると、ある住宅団地の街区にこのような横断幕が掲げられているのを発見した。
珍惜民主權利,投好莊嚴一票!

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【2016.3.6】横断幕

 せっかくの民主的な権利、(無駄にすることなく)いい街をつくるため一票を投じましょう!
 中国でこのような横断幕を見ることになるとは思いもよらなかった。一党独裁の中国では、選挙は行われていないのではなかったか。
 調べてみると、郷級人民代表大会と県級人民代表大会については代表者を、選挙を通じ、選んでいるようである。さらに上級の省級人民代表大会と、全国人民代表大会の代表者に関しては、下級の人民代表大会の代表者による投票で定められるというから、省級人民代表大会と全国人民代表大会は直接選挙ではなく、間接選挙である。日本が、内閣総理大臣を選出する仕組みと大差はない。
 こう書くと、一見、民主的な制度にみえるが、省級、全国の立候補者は必ずしも下級の人民代表大会に属していなくてはならないというわけではないので、国民による直接の信任がない人が省級あるいは全国人民代表大会の代表者になるとことができるし、また、郷級、県級の人民代表大会に立候補者は共産党の息のかかった選挙委員会の「審査」によって共産党の意にかなわない人は振り落とされてしまうので、選挙自体が形骸化してしまっている。中国における選挙というものは、共産党による支配が国民の信任を得ているということを形式的に証明するためだけに存在する制度であり、民主的な自由選挙とは言えない。どうせ投票をしたところで、共産党による支配が変わることはない。そのためか、選挙は多くの中国人には見向きもされていないし、中国には選挙制度が存在しないと思っている中国人すらいるという。