香港から深圳へと地下鉄で移動する際、落馬洲・福田ルートを利用することも可能だ。2007年に開通した、新しいルートである。

香港-02


 今回は、福田(深圳側)から、落馬洲(香港側)へと通り抜けた。深圳MTR4号線(竜華線)の終点、福田口岸(Futian Checkpoint)駅で下車する。

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【2015.11.2】深圳市福田区イミグレーション前

 福田イミグレーションは、深圳の中心部にほど近いところにある。深圳市内の目的地により、羅湖・罗湖ルート、落馬洲・福田ルートを使い分けるのがよさそうだ。

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【2015.11.2】深圳市福田区イミグレーション前

「出租车(出租車, タクシー)」
「公共汽车(公共汽車, バス)」

 といった単語がみえる。深圳から香港に入ると、簡体字が繁体字へと変化するだけではなく、同じ漢字語でも語彙が変化する。「出租车」は「的士」に、「公共汽车」は「巴士」になるであろう。香港は英国の統治を受けていたためか、英語からの借用語が頻繁に利用される。「的士」は「taxi」を広東語の発音で当て字、「巴士」は「bus」を広東語の発音で当て字をした表現である。
 出入境にかかる時間は、どちらのルートにしろ、さほど変わらないように思われる。30分程度の時間を要した。香港に入ると、簡体字だったものが繁体字へと切り替わりほっとする。我々の世界に戻って来たかのような安堵感がある。

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【2015.11.2】東鉄線落馬洲駅にて

 落馬洲駅から北側を望むと、深圳のビル群がみえる。あちらは社会主義、こちらは資本主義。一国二制度の境界線がここにある。

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【2015.11.2】東鉄線落馬洲駅にて

 駅の南側の風景は、全く異なる。香港側には、田園地帯が広がっている。米埔(Mai Po)と呼ばれる湿地帯である。香港辺境区域という、英領香港時代に香港側が中華人民共和国側からの人々の侵入を防ぐことを目的とし設けられた、立ち入り禁止区域である。西側諸国と東側諸国の境界線として常に緊張していたところだ。香港が中国に返還されていてからも、立ち入り禁止区域としての指定は完全には解除されていない。今もなお、立ち入ることができるのは、辺境区域内の住民あるいは入域許可証(通称:禁区紙)を発給された人に限られる。つまり落馬洲駅は、深圳に行くための施設でしかなく、建物の外部へ出ることができない。

 深圳側は香港との境界付近までぎっしりと建物が立ち並んでいるのに対し、香港側の深圳との境界付近は田園地帯なのである。深圳は、香港のことを呑みこもうとしているのに対し、香港は、イヤよイヤよと逃げようとしている。そのように思えてならなかった。

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