2015年にフィリピンを訪れた外国人は、

韓国人:134.0万人  
日本人:49.6万人
中国人:49.1万人

 となっており、フィリピンは韓国人にとって非常に人気の高い旅行先である。2015年にフィリピンを訪れた韓国人の数は、同時期にフィリピンを訪れた日本人と中国人の合計値よりも多かった。フィリピンにおいて外国人観光客と言えばまず「韓国人」なのである。
 しかし、たくさんの韓国人が訪問するにつれ、さまざまな問題が顕在化しているようだ。仁川国際空港(인천국제공항)には、フィリピン渡航者向けに、外交部(日本でいう外務省に相当)と在フィリピン韓国大使館により発行されたフィリピンの安全情報に関するパンフレットが置かれていた。そもそも、特定の国に渡航する人に向けて、安全情報に関わるパンフレットが制作され置かれているということ自体が異例の事態であるため、興味深かった。

韓国外交部フィリピン海外安全情報1

「フィリピンでは何に気を付けなくてはならないのでしょうか」

事件・事故
・韓国人の定年退職者あるいは長期在留者の居住地域であるカビテで連続的に殺人事件が発生しました
・ミンダナオなど南部地域では、リゾートでの休養中にイスラム原理主義組織 - アブ・サヤフにより拉致される事件が発生しました
・マニラ首都圏一体、アンヘレス、バタンガス、セブなど外国人観光客が多く訪れる地域で強盗事件が頻発しています

自然災害
・フィリピンは環太平洋造山帯に位置しており火山、地震、台風などの自然災害が多く発生しています
・2013年10月 M7.2の地震により200人にのぼる死亡・行方不明者が発生しました
2013年11月 超大型台風ハイエンにより7350人ののぼる死亡・行方不明者が発生しました

外交部・在フィリピン韓国大使館

韓国外交部フィリピン海外安全情報2

 海外安全情報

(白:特に注意情報無し)
青:十分注意
オレンジ:渡航自粛
赤:渡航中止勧告
黒:渡航禁止

 韓国でも日本の外務省と同様、海外安全情報を発令し、自国民に対し情報提供を行っている。韓国でも日本と同様、四段階での情報提供がおこなわれているが、日本と韓国で異なる点といえば、韓国では黒色の部分、すなわち旅行禁止区域への渡航が確認された場合、旅券法によってパスポートの使用の制限などの法的制裁が加えられる可能性がある。つまり、安全情報自体か法的効力を有しているという点にある。
 よって、韓国人が韓国のパスポートをもってミンダナオ島に渡航した場合、それは旅券法に違反するのである。日本人が日本のパスポートをもってミンダナオ島に渡航しても、それは法律に違反することにはならないため、韓国のパスポートは海外の治安の悪いところに旅行をするには、日本のパスポートに比べて不便であることは言えるだろう。
 韓国外交部はフィリピン全域に海外安全情報を出しており、マニラ首都圏ですら「渡航自粛」の対象となっている。「十分注意」に指定されている、韓国外交部によってフィリピン国内では相対的に治安がよいと考えられている地域(それでも注意情報無しというわけではない)は、スービック市、ボラカイ島、ボホール島、ラプラプ市(セブ・マクタン島)しかない。
 韓国政府は基本的には自国民に、フィリピン旅行を自粛してほしいと思っているようだが、渡航者数をみるに国民はあまり耳を傾けていないようだ。これだけの旅行自粛を要請するのは、在フィリピン韓国大使館が韓国人の絡む事件や問題が増え、それに対応しきれていないからだろう。
 この冊子の内部の詳細な内容については、次の記事に掲載する。
 
■つづき
 #0431.韓国外交部によるフィリピン海外安全情報 2