埼玉県入間郡毛呂山町にある「鎌北湖」という湖に、紅葉狩りに行った。11月に暖かい日が続いたせいか、今年の奥武蔵の木々の色づきは、さほどよくない。やはり朝夕の厳しい冷え込みにさらされないと、鮮明には色づかないようだ。

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【2015.11.28】鎌北湖

 鎌北湖は1935年に完成した農業用の貯水湖だという。毛呂山町によると、別名、「乙女の湖」と呼ばれているそうだ。なぜ、乙女なのだろうか。高いところからみると、山あいにあるこの周囲約2kmの小さな湖は、孤独に、乙女の涙のようにちょこりと佇んでいるように思われる。あるいは、ここで女性が投身自殺でも図ったのだろうか「乙女の湖」といえばなんだかロマンチックに思われるけれども、実際の湖を目にしてみると、浪漫なんかこれっぽっちも感じない。むしろ、想像は暗い方へと傾いてしまう。

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【2015.11.28】ドウダンツツジ

 ドウダンツツジの葉が真っ赤に紅葉している。

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【2015.11.28】鎌北湖

 この湖、1929年の世界恐慌をきっかけとする不景気の、景気対策の一環としての公共事業によりつくられたという。世界恐慌を克服するため、アメリカでは大統領のフランクリン・ルーズベルトがニューディール政策を称して、政府により数多くの公共事業がおこなわれたが、日本でも同じ時期に、同様のことがおこなわれたわけである。特に、当時、奥武蔵では、養蚕業が盛んであった。生糸は主に、欧米諸国に輸出されていたが1929年を境に全く売れなくなってしまったという。なぜ湖がここにあるのかといえば、この地域が世界恐慌の打撃をもろに受けたからであろう。鎌北湖は、世界恐慌の歴史を色濃く残している。
 
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【2015.11.28】鎌北湖

 説明板によると、春には桜、秋には紅葉が有名だという。単純だと思う。人造湖をつくり、観光地とするために、桜の木と紅葉の木を植えたといったところだろうか。そう考えると、「乙女の湖」という名前も、そこには由来などなく、観光客を呼ぶためになんとなく響きのいい名前をつけてみたというのが、実際のところであろうか。

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【2015.11.28】紅葉

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【2015.11.28】紅葉

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【2015.11.28】紅葉

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【2015.11.28】紅葉

 晩秋を楽しむ。

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【2015.11.28】水面

 木々の赤、緑、黄色に、湖の青色が美しい。

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【2015.11.28】鎌北湖

 湖畔には「山水荘」という廃業したホテルがあり、心霊スポットとして有名だそうだが、この廃墟の存在がこの湖の雰囲気をより暗くしていることは否めない。昭和の乙女はこれからも、ひっそりと忘れられていくのだろう。

■鎌北湖への行き方
東武越生線東毛呂駅から約5.4km
JR八高線毛呂駅から約4.2km