ヤルカンドの墓地で、二羽の鶏を持った男性と、女性ふたりと、イマーム(モスクの指導者)だろうか、4人とでくわす。

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【2016.9.18】男性

 女の人が手招きをして、見ていきなよといった仕草をするから、見ていくことにした。
 男はまず墓地の地面に、足で浅いくぼみを掘り、それからおもむろにナイフを取り出し、アッラーの名を唱えてから、そのくぼみの上あたりで鶏の首に切れ目を入れた。

IMG_3032【2016.9.18】鶏の屠殺

 そうすると切れ目から、血が流れ出した。ちょうど、蛇口をひねったときの水のような、そういった感じの流れ方をした。

IMG_3037【2016.9.18】鶏

 しばらくして、血の流れる勢いがおさまることを確認すると、首を完全にかき切った。

IMG_3039【2016.9.18】鶏

 二羽目についても同じことをする。その様子を、みな、無言で眺めていた。鶏を殺し終わると、イマームによってコーランが暗唱された。そこには、開端章が含まれていたのは分かったが、それ以上は分からなかった。
 男は鶏の血と鶏の頭を、そのくぼみを入れて、足で砂をかぶせた。
 それから、彼らについて歩いていく。

IMG_3042【2016.9.18】ヤルカンドの墓地にて

 マリーゴルドが咲く墓地を歩いていく。

IMG_3043【2016.9.18】ヤルカンドの墓地にて

 歩いていると、何か建物が見えてくる。

IMG_3044【2016.9.18】スルタンの墓

 自治区級重点文物保護単位 斯勒坦马扎

 とある。新疆ウイグル自治区の保護文化財のようだが、斯勒坦马扎(スルタン・マザールすなわちスルタンの墓の意)だけでは、その正体がよく分からない。
 手前にある木には布がかぶせてあるが、なにかチベット仏教のタルチョを思い出させる。 

IMG_3052【2016.9.18】スルタンの墓

 建物は壊れていて、きちんと管理されているようすではなかった。中に入ることもできなかった。
 ところで、鶏を屠殺した彼らはお墓参りにやってきたようだった。鶏は彼らの食用ではなくて、捧げもののようだった。イマームと思われる人物は墓の前で何かを暗唱して、40元(約610円)をもらっていた。これで、彼の仕事は終わったようだった。
 女性のうち一人は、すこし中国語を話すことができた。

IMG_3055【2016.9.18】女性

 なぜ中国語が話せるかと言えば、漢族の男性と結婚したからだそうだ。10代になる一人の娘がいるが、もう離婚してしまったという。スマートフォンで10代の娘と撮った写真を、見せてくれた。可愛らしい親子だった。
 漢族とウイグル族の結婚というのは、同じ中国国籍を持つ者同士の結婚ではあろうが、言語や文化的習慣など生活には困難を伴うに違いない。

IMG_3060【2016.9.18】ヤルカンドの墓地にて

 愛想のよい、我々を歓迎してくれた一行と別れ、僕たちはまた来た道を戻る。

IMG_3066【2016.9.18】ヤルカンドの墓地にて

 陽が傾き始めていた。

IMG_3068【2016.9.18】マリーゴールド

 マリーゴールドが西日に染まり、一層、濃い色をみせている。 

2016年9月 ウイグル9泊10日
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