屋台で茹で鳩を食べてから、食堂に入る。
 食堂は、カルギリク・ジャーミー(葉城加米大清真寺)前広場の、北東角にある「来再堤特色飯庄」である。店舗には「来再堤特色抓飯店」という表記もあり、漢字表記は一致しない。

IMG_3472
【2016.9.19】食堂にて

 店内はさほど大きくはないが、小奇麗である。
 その時いた店員のうち、中国語ができるのは一人だけだった。はにかみ屋さんの女性の店員が、対応してくれた。彼女の話によれば、彼女は若いが以前、ウルムチで仕事をしていたことがあるため、ある程度の中国語が話せるということだった。このあたりのウイグル人は、「日本人が東京に上京すること」と同じようなニュアンスで「ウルムチに行くこと」を語る。
 まず、お茶が出てくる。

IMG_3473【2016.9.19】お茶

 よくカレーに入っているスパイスの香りと味がするお茶である。
 まずラグマンを食べようとしたが、僕も、同行のK氏も疲れていたから、何かさっぱりとしたものを食べたかった。注文の際、果物はないかと尋ねたところ申し訳なさそうに、「当店では提供していません。ごめんなさい。お店の外に果物売りが出ているので…」といいながら、お店の外を指さす。そういうことならば、宿に戻る道で買えばいいか、ここではお茶とラグマンを楽しむことにしようと、K氏と考えが合う。
 ラグマンは、幅の太いものと細いものを提供しているという。ひとつずつ、注文することにした。

IMG_3475【2016.9.19】太いラグマン

 まず、太いラグマンが出てくる。
 さながら、「ほうとう」のようだ。

IMG_3477【2016.9.19】太いラグマン

 ラグマンといえばトマトがふんだんに使われ、赤いというイメージがあるが、ここの食堂のラグマンはトマトではなくにんじんやじゃがいも、かぼちゃなどが入っていて、むしろ、橙色だった。唐辛子も入ってて、おいしい。

IMG_3479【2016.9.19】太いラグマン

 具材をかけてみても、ビジュアルとしては、山梨県の郷土料理である「ほうとう」のようだ。麺はコシが強いが、小麦粉の匂いがやや強い。
 となりでは、それぞれ子どもや赤ちゃんを連れた母親たちが集まって食事をしていた。そのうちの一人が、店内で授乳を始めたので、ウイグル人の乳房と乳首をまじまじと目撃することになった。
 次に、通常のラグマンが出てくる。

IMG_3480【2016.9.19】ラグマン

 こちらもスープの色が橙色だ。しかし、これがカルギリクのラグマンの特徴であるのか、それともこのお店の特徴であるのかについては結論付けることはできない。これもとてもおいしい。麺は手打ちの麺で、後ろの工房で、麺を切っているのが見えた。
 それから、羊肉串が焼きあがるのを待った。待っていると、さきほどの女性の店員が、羊肉串に加え、洗った葡萄と切った西瓜を持って、お皿に乗せてやってくるではないか!

IMG_3487【2016.9.19】羊肉串と西瓜

 さすがに感激した。果物を広場で買わせて、洗ったり切ったりして持ってこさせるつもりは全くなかったのだ。なぜ、そこまでしてくれたのだろう。日本からわざわざやってきたのだから、いい思い出を持ち帰ってほしいとでも思ったのだろうか。感謝の言葉を述べても彼女はただただ、はにかむだけだった。西瓜も葡萄もとてもおいしかった。
 しかし、会計をすると、ラグマンと羊肉串の代金しか要求されていないのだ。それでは申し訳ないと思い、20元(約305円)ほど上乗せした金額を支払おうとした。しかし、彼女ははにかみながら、そのお金を受け取ろうとしなかった。我々はもう一度、「気を利かせてくれてありがたかった。受け取ってほしい」と説明して、お金を差し出したが、それでも受け取ろうとしなかった。
 お金が欲しくてほどこした親切だと思われたくなかったのだろうか。結局、我々はラグマンと羊肉串の代金しか支払わなかった。カルギリクの食堂は人が親切だった。お店を出ようとすると、店員たちがみな手をふってくれた。どうすれば感謝の念を伝えることができるだろう。そう考えて、次の日の昼食もこの食堂で食べることにした。

■来再堤特色飯庄(来再堤特色抓飯店)
位置:カルギリク・ジャーミー(葉城加米大清真寺)前広場の北東角
店舗外観:
IMG_3505

2016年9月 ウイグル9泊10日
◀前の旅行記:#0503.カルギリクでウイグルの茹で鳩を食べる
▶次の旅行記:#0505.プロパガンダ広告から考える新疆ウイグル自治区