友人と、ウイグル料理を食べにいく。
 1月に中国・広州のウイグル料理店でラグメンを食べたのに次いで、2017年、2度目のウイグル料理となった。

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【2017.2.3】シルクロード・タリム

 東京でウイグル料理を食べることのできるレストラン「シルクロード・タリム」は新宿にある。
 新宿区は、人口の約8分の1が外国人であり、日本の自治体としては外国人人口比率が1位ではある。ウイグル料理店の存在から示唆されるように、実にさまざまな国籍、民族の人々が共存しているのである。
 友人は、ウイグルには行ったこともなかったし、ウイグル料理を食べたこともなかった。しかし、彼はウズベキスタンへは行ったことがあったから、中央アジアの料理だから大体、想像がつくとは言った。

 僕 : 「たしかにウイグル料理も中央アジアの料理という範疇には含まれるだろうし、ウズベキスタンの料理との共通点は非常に多いけれども、ウイグルではウズベキスタンでは利用することのない箸でものを食べるし、ラグマンはコシが強くてまるで『讃岐うどん』のようだったりして、案外、想像しきれないものだと思う」
 (参考 : #0479.ウイグルのラグマンに衝撃を受ける)

 しかし、まるで「讃岐うどん」のようだという描写については、あまり飲みこんでくれなかった。中央アジアの料理が、「讃岐うどん」と似ているという発想が、あまりにも突飛すぎるらしい。

IMG_5960【2017.2.3】お通しと箸

 店内に入り、注文を済ますと、箸とお通しが出される。
 ワンドリンクは必ずオーダーしなくてはならない。ローズティーを初めてとしたお茶から、ビールなどの酒類までが揃う。いや、ちょっと待った、酒類?イスラム教を信仰しているウイグル人のレストランに、アルコール飲料が置かれているのか。
 今回は注文しなかったが、コース料理もある。
 
 2500円のコース→ウルムチコース
 3500円のコース→トルファンコース
 4500円のコース→カシュガルコース

 と名づけられている。新疆ウイグル自治区の自治区首府であるウルムチが最も格下であり、カシュガルが最も格上であるということは、何を伝えようとしているのか。
 まずは、羊の舌サラダが出てくる。

IMG_5961【2017.2.3】羊の舌サラダ

 これは以前のウイグル旅行では食べたことのないものだったが、案外、さっぱりとしていてなかなかおいしかった。
 羊肉の串焼きが出てくる。

IMG_5970【2017.2.3】シシカワプ

 その香辛料の香りも含めて、ウイグルで食べたものと変わりはなかった。
 それから、期待していたラグマンが出てくる。

IMG_5974【2017.2.3】ラグマン

 全て厨房で打たれた、手打ち麺である。とてもコシがあっておいしい。友人は「何これ、おいしい」と言う。まるで「讃岐うどん」という描写についても、ある程度、理解してくれたと思う。

 友人 : 「確かにこれは、食べてみないと分からないね」

 ラグマンがおいしかったから、もう一つ、食べてみることにした。
 次は、「あんかけ(具がのっかっていない)」のラグマンを食べることにした。麺は通常の麺と、きしめんのような幅広の麺を選択することができるから、きしめんのような幅広の麺を選択した。幅広の麺のラグマンは、カルギリク(葉城)で食べたことがある。
 (参考 : #0504.カルギリクの食堂のおもてなしに感激する)

IMG_5965【2017.2.3】タリム特上あんかけ麺(手打ち麺)

 あんを、麺の上にかけてから食べる。

IMG_5968【2017.2.3】タリム特上あんかけ麺(手打ち麺)

 店内はそこに食堂があったからなんとなく入った人たちというよりは、ウイグル料理をわざわざ食べに来ている人の方が多かったと思う。どのテーブルでも大体、ウイグルという地域に関する話をしていた。特に、隣のテーブルにいた、東大出身のサラリーマンだか官僚だか分からない若いグループが、トルコ語とウイグル語の語彙に関する話だとか、イスラム文化に関するマニアックな話を展開していたから、「我々は所詮、旅行先としてウイグルや、イスラム文化を消費しているだけに過ぎず、深く知ることはできていない」という妙な敗北感を感じたのだった(笑)
 ウイグルに旅行に行ったことがあるということを伝えると、喜んでくれた。出身をきいてはみたが、トルファンだったりと、僕の行ったカシュガルやヤルカンド、カルギリク、ホータン出身の人はそこにはいなかった。カルギリクという地名が、ウイグル語の発音からかけ離れているからなかなか伝わらなかったが、中国語で「葉城」と言ったところ、通じた。ウイグル旅行時、ウイグルでは中国語の話せない人が多かったというと、食堂で働いている人はみな読み書きが十分にできるという。
 ウイグル旅行について感想をきかれたので、「古来からの文化が守られているようだったし、料理はおいしく、人々も親切だったが、警察が多かったため、不便を感じることもあった」と言った。しかし、「警察」という言葉を発した瞬間、あからさまに表情を悪くした店員がいたことから、これについては言うべきではなかったと思った。それは、思い出したいものではなかったのだろう。

IMG_5979【2017.2.3】シルクロード・タリム外観

 それにしても、東京にいながら、新疆ウイグル自治区のものと変わらないウイグル料理を食べられるとは思わなかったから、大変、満足した。
 もしも、ウイグルと違うことがあるとしたら、それは、東京ではラグマンの食べ比べができないということであろうか。つまり、ウイグルでは各食堂が誇る、手打ちの麺の味と、かける餡の味がある。多様なラグマンを体験するということはやはり、新疆ウイグル自治区にまで行かないとできないであろう。

■シルクロード・タリム
 住所 : 東京都新宿区西新宿3-15−8
 営業時間 : 午後5時~午前0時(土日祝日は午後12時~午前0時)
 京王線「初台」駅徒歩7分, 大江戸線「都庁前」駅徒歩13分, 「新宿」駅徒歩13分など