39度近い発熱状態でバンコクに到着し、アパートの契約書にサインしてから、水だけを買って、アパートの一室に入り、眠りに入ったのが午前8時頃だっただろうか。それから、何時間が経っただろう。夕方の、4時過ぎに起床する。だいぶ、発熱は収まっていた。
 ふと、階下から日本語の甲高い声が聞こえた。「きゃはは」だとか「やめてー」だとか、聞こえてきた。タイで、まさかの日本語の叫び声を聞くとは。これだけはっきりと聞こえるのだ。熱も下がっているのだ。幻聴ではあるまいと思いと、ベランダから階下を覗きこむと、人々が水鉄砲やバケツで水をかけあっていた。

IMG_2001
【2017.4.14】ソンクラーン

 4月13日から15日はタイでは新年のお祭りにあたる、ソンクラーンであり、水をかけあうという習慣がある。この日だけは無礼講で、通りかかる車両や、見知らぬ通行人に水をかけてもよいのだ。
 バンコクのスクンビット界隈には、日本人の駐在員とその家族がおおく住んでいて、彼らも、タイ人のように、いや、タイ人よりも熱心に水をかけあう。見知らぬ通行人に水をかぶせてもよい。そういうことは、日本ではできないから、タイにやってくるとタガが外れるのだろう(笑)思ったより日本人も、タイに馴染んでいて、微笑ましい光景である。
 体温計で体温を計ると37.0度前後に落ち着いていた。12時間前まで39度近いが出ていたはずなのに、案外、何とかなるものである。熱が病み上がりの体だったが、せめて人と連絡だけはできるよう、携帯電話のSIMカードを確保しておきたかったから、外出することにした。
 街を歩いていると、案の定、僕も水をかけられた。特にひどかったのが、タイ人女性二人組だったのだが、バケツに汲んだ水をもってきて、僕の前後から近づき「Happy new year khaa!!」といいながら、僕の胸から下を全部、冷水でずぶ濡れにする、そういうことをした人たちだった。病み上がりの体であるにも関わらず、出発地東京とは大きな気温の差があるバンコクで、冷水でずぶ濡れにされる。タイ生活の第一の試練である(笑)しかし、なんだか、愉快だった。もう、どうとでもなれ。
 ずぶ濡れの体のまま、地下鉄に乗る。たくさんの人が濡れていて、地下鉄自体が濡れているから、濡れているからといって迷惑にはならない。しかし、濡れた体を冷房で冷やされて、体調をまた崩すのではないかと不安になった。地下鉄にはたくさんの、水鉄砲を手にした特攻部隊がいた。

IMG_2011【2017.4.14】広場にて

 噴水があるようなところでは、水鉄砲部隊が水を補充する。

IMG_2009【2017.4.14】広場にて

 やはり、何度も水鉄砲で濡らされた。若いからだろうか、それとも、怒りそうもない温和な人間に見えるのだろうか、たくさん水をかけられた。(水をかけられて怒るタイ人というのも少なくなくて、よく喧嘩は起こるから、あの人にはかけても問題なさそうだとか、あの人は避けるべきだとかいったたぐいの「空気の読み方」をタイ人は幼少時から、ソンクラーンを通して学ぶという)
 携帯電話を防水用のビニール袋に入れていなかったからはらはらしたが、結局、荷物を積極的に濡らそうという悪質な人に出くわさなかったのは幸いだった。 
 買い物を終え、食事をし、家に帰るとすでに夜になっていた。 夜、体温を計ると、37.5度ほどにぶり返してはいたものの、また夜、しっかり寝て、朝起きると、喉はまだ痛かったけれども、ほぼ平熱に戻っていた。いよいよタイ生活が始まるのだと気を引き締めれば、39度の発熱も1日で治るものなのだと思った。