地球の覗き方

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カテゴリ:中国 > 上海市

 外灘の夜景を見に、南京東路駅を降りる。

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【2016.3.5】南京東路駅周辺

 「お兄さん、マッサージ?」という中国語、英語、日本語、韓国語の勧誘が、一人で歩いている男を狙い撃ちにする。ああ、しつこいんだよ。ひとり、観光させてくれよ。中国旅行中に、性風俗に関する勧誘を受けたことは今までなかった。あったのは、うちのホテルに泊まらないかというものや、観光地のガイドどうですかというものだった。

IMG_5010【2016.3.5】外灘へと向かう

 外灘へと向かう道は人で溢れており、歩道だけではおさまらないためか、車道の1車線も人の歩く道になってしまっている。

IMG_5016【2016.3.5】外灘

 外灘に到着する。近代建築群の威風堂々したようすは、夜景においても変わらない。

IMG_5019【2016.3.5】浦東新区の夜景

 黄浦江の向こう、浦東新区の高層ビル群を望んでみるが、霧が出ているためかぼんやりとしている。あるビルはその壁面に、不動産の広告やらを流していて、あまりロマンチックとはいえない。そこの生活感を見出して、面白いとする人もいるのかもしれないが、そういう亜流の楽しみ方をする気には僕はならない。水面と超高層ビル群の景色なら、香港の方が好きだ。

IMG_5036【2016.3.5】外灘

 どちらかといえば、外灘の近代建築群のライトアップの方が印象的だった。

IMG_5041【2016.3.5】外灘

 昼は25度近くまで上がったというのに、あっという間に気温が下がり、寒さを感じる。湿っている上、風が吹いているから、冷たいシャワーでも浴びているかのような寒さがある。昼の暖かさに油断して、上着を持ってこなかった。予想だにしなかった寒さにこごえながら、夜の街をひとり、宿へと帰った。



 上海料理といえば「小籠包」が有名だ。日本では小籠包のことを「ショウロンポウ」と呼ぶ。北京語の発音で読むと「シャオロンパオ」が近いのだが、なぜ「ショウロンポウ」と呼ばれるのかといえば、それは上海語の発音に由来しているからだ。つまり小籠包はれっきとした上海料理なのである。
 日本国内で「小籠包」といえば台湾のものも有名だが、1945年以降、国共内戦の混乱において、台湾に流入した大陸人によって持ち込まれた料理であり、台湾の土着の料理ではない。

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【2016.3.5】呉江路

 小籠包の発祥の地は、上海郊外にある「南翔」といわれている。その南翔で創業し、その後、上海市の都心へと移転した南翔饅頭店の店舗が、呉江路にある。豫園にある店舗が本店だそうだが、ひどく混雑していたから、呉江路へとやってきた。地下鉄南京西路駅からすぐのところにある。呉江路はレストラン街として商業開発されていて、たくさんの人で賑わっている。日本、韓国、台湾ブランドのレストランが目立つ。特に韓国系の勢いが強いようにみえる。上海という都市を、日本と韓国と台湾が競い合って攻略しようとしているようにみえる。
 お店には並ぶことなく、すぐ入ることができた。南翔饅頭店は、創業100年以上が経っているという。僕は知らなかったが、すでに海外にも進出をしていて、東京、川崎、大阪、福岡などにも店舗があるという。
 まずは、上海炒飯が出てくる。

IMG_5001【2016.3.5】上海炒飯

 茶色の炒飯が出てくる。どこが、上海的なんだろう。海産物、海老が入っているあたりだろうか。パラパラというよりは、やや重みのある仕上がりで、味も濃いめであった。
 次に、小籠包が出てくる。

IMG_5004【2016.3.5】小籠包
 
  しっかりとした皮の中に、しっかりとした肉の塊と肉汁が入っている。日本で小籠包といえば、「薄皮」「多汁」が正義のように言われているが、それを正義だと思っていると、ややもの足りない味かもしれない。箸でつまんでも、破れたりはしなかった。そもそも日本における小籠包は、日本人の好みに合わせ、極端な方向に進化しすぎてしまったのかもしれない。

IMG_5005【2016.3.5】蟹味噌小籠包

 最後に、蟹味噌の小籠包が出てくる。さきほどの小籠包の2倍の値段である。蟹味噌だから、お酢とよく合う。ただ、僕には少し、塩辛かったかな。
 僕も薄皮多汁を正義だとしている人間だからか、上海初の小籠包体験は、大満足というわけには行かなかった。

■南翔饅頭店 呉江路店
住所:呉江路269号2階
地下鉄2, 12, 13号線南京西路駅4番出口徒歩1分
営業時間:午前10時~午後10時



 外灘から黄浦江をながめる。

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【2016.3.5】黄浦江

 上海といえば誰もが思い浮かべる、あの景色が見られる。

IMG_4963【2016.3.5】浦東新区を望む

 浦東新区の超高層ビル群だ。東方明珠塔とよばれる467.9mのタワーや、釣り鐘型の492mの上海環球金融中心がみえる。この上海環球金融中心は、日本の森ビルが設計、建設および運営に関与している。また、その隣には、上海中心大厦という天に昇る龍をモチーフとしたいわれる高さ632mの新しいビルがみえる。2016年3月15日に完工し、完工時点では、ドバイのブルジュ・ハリファに次ぐ世界第2位の高さのビルとなっている。これだけビルの高さを高くしてしまうと、エレベーターによる輸送量を増やすため、ビルの断面積に占めるエレベーターの割合を増やさざるを得なくなるし、ビル全体のメンテナンスにもお金がかかるようになるから、あまり効率的とは言えない。むしろ、技術力の誇示、資本力の誇示という、欲望の具現である。

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【2016.3.5】浦東新区を望む

 たくさんの人が押し寄せている。上海といえば誰も思い浮かべる景色の前で自撮りをして、SNSにアップロードして、「いいね!」を押してもらうんだろう。上海にやってきたという証拠写真にもなるし、自慢にもなる。観光地とは、そうやって消費されるものだ。
 もともと、1990年まであの地区には高層ビルなんか1本なかったというから、上海は本当に急速な発展を遂げたんだと思う。

IMG_4956【2016.3.5】外灘

 あまりにもたくさんの人がいるので、水面やビル群をながめながらゆっくりとする、そのような雰囲気はあまりない。

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【2016.3.5】モニュメント

 何かのモニュメントがある。革命に関するモニュメントなんだとか。上海の街並みは、それは我々が住む資本主義の世界とさほど変わらないから、そこが社会主義国であることを忘れてしまうが、こういうものの存在がその事実を思い出させてくれる。そもそも上海は、資本の力で都市が動いていると思う。ああいった、浦東新区の「資本力の具現」としての摩天楼は、階級による対立のない共同社会を謳った社会主義だとか共産主義とは矛盾する。ここは建前上の社会主義国であり、共産党一党独裁の資本主義国のようなものだと、上海にいると思う。

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【2016.3.5】上海とラブライバー

 ところでそのモニュメントの近くに集めっている人たちのTシャツに、日本語が見える。「ラブライブ」とあるではないか。 日本のアニメ「ラブライブ」を信奉する、オタクのサークルだろうか。上海にもファンが多いようだ。とにかく派手なもの、資本力の誇示に精を出す高層ビル群とオタクのすがたにギャップがあって、くすりと笑ってしまう。



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