地球の覗き方

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カテゴリ:日本 > 北海道

 日本本土最東端の納沙布岬から、日本最東端の鉄道駅「東根室駅」へと向かう。
 「東」をめぐる旅をしている。

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【2016.10.24】根室半島太平洋側の集落

 根室半島の、太平洋側を通っていく。オホーツク海側よりも住宅が多い。

IMG_6064【2016.10.24】根室半島太平洋側の集落

 納沙布から、珸瑤瑁(ごようまい)、歯舞(はぼまい)、双沖(ふたおき)、友知(ともしり)といった集落を経由して、根室市内へと戻っていく。

IMG_6075【2016.10.24】根室市内へ

 右手に沼地を見る。

IMG_6078【2016.10.24】沼

 根室市街にある、JR北海道の東根室駅へとやってくる。

IMG_6081【2016.10.24】東根室駅

 JR根室本線の終点の根室駅のひとつ手前の駅だが、日本最東端の駅となっている。

IMG_6088【2016.10.24】東根室駅

 駅前には、車を止められるスペースがある。
 観光地となっているようで、ちょうど、団体観光客を乗せた大型バスとすれ違った。

IMG_6082【2016.10.24】東根室駅

 木製のプラットフォームがかっこいい。
 周辺には人家があるけれども、1日当たりの平均乗車人員は0人(2012年度)と、存続が危ぶまれる駅である。根室行きの下り列車が1日5本、釧路行きの上り列車が1日5本停車するのみである。

IMG_6085【2016.10.24】東根室駅

 駅名標には、「にしわだ」とシールが貼られている。もともと、上り方面のとなりの駅は4.1km先にある花咲駅だった。しかし、1921年に開業したこの駅は、2016年3月26日に廃止された。今の上り方面のとなりの駅は、8.7km先の西和田駅となった。その西和田駅も1日あたりの平均乗車人員が1人ばかりと、存続が危うい。

IMG_6087【2016.10.24】東根室駅

 1日あたりの平均乗車人員は0人ではあるが、観光を目的に訪れる人はもっと多いだろう。

IMG_6089【2016.10.24】東根室駅

 それにしても周辺に住宅が広がっているにも関わらず、1日あたりの平均乗車人員が1人にも満たないということは、鉄道という交通手段がまったく利用されていないということが分かる。 
 なお、日本の歴史上、最東端にあった駅はこの駅ではなく、根室半島の太平洋側をかつて走っていた鉄道路線の、1929年に開業し1959年に廃止された根室拓殖鉄道の「歯舞駅」だったとのこと。


 日本最東端のポストがある。

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【2016.10.24】日本最東端ポスト

 岬の先に向かって、歩いていく。

IMG_6029【2016.10.24】納沙布にて

 海の向こうには、ロシアが実効支配している水晶島が見える。

IMG_6031【2016.10.24】水晶島

 1億2500万人が居住する日本で、一番、東に住んでいる人たちがここにいる。

IMG_6032【2016.10.24】日本最東端の家々

 日本最東端の暮らしには、昆布の干場がある。
 岬の先には、灯台がある。

IMG_6034【2016.10.24】灯台

 灯台の裏には、バードウォッチングのための小屋がある。

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【2016.10.24】バードウォッチングの小屋

 日本の最東端にある施設は、対岸のロシアを監視するための施設ではなく、鳥を観察するための施設だったのだ。
 冷戦のころには、この海が西側諸国と東側諸国の境界であったはずだが、そういった緊張感を一切、感じることができない。

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 しばらくの間、日本列島に住む1億2500万人の、一番、東側に立ってみた。
 今、この国にいるどんな人よりも、東側にいたのだった。

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【2016.10.24】納沙布岬

 1872年に建造された灯台で、北海道で初めての洋式灯台といった説明がある。
 後ろを振り返ると、民家がある。

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【2016.10.24】日本最東端の民家

 日本最東端の洗濯物が干してある。
 日本本土最東端の岬の先にある灯台が、民家のすぐ裏手、すなわち集落の中にあるということを僕は知らなかった。

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【2016.10.24】納沙布にて

 来た道を戻っていく。

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【2016.10.24】昆布干場

 中から人がでてきて、昆布を置いていった。
 強い太陽の光、それから吹きさらしの冷たい風に晒されて、旨味の凝縮した昆布になるのだろう。これが、日本最東端の暮らしのようである。さて、日本最西端(沖縄県与那国町)、日本最北端(北海道稚内市)、日本最南端(沖縄県竹富町波照間島)の暮らしはどうなっているのだろう。今後、この目で見てみたいものである。

納沙布岬到達証明書 

 500円で、本土最東端証明書を買って、納沙布岬をあとにした。


 北方館の2階には無料で利用できる望遠鏡が置かれていて、北方領土の島々を望遠鏡を通して覗くことができる。

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 納沙布岬から、ロシアの歯舞諸島の水晶島(Остров Танфильева)までは、珸瑤瑁(ごようまい)水道を挟んで、距離が7kmにしか満たない。
 人生初めて、ロシアの領土を目にすることになった。根室半島と地形や植生が似ているため、そこが外国であるという印象はないが、目を凝らしてみると、建物が建っていて、そこがロシアであることを感じさせられる。

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 赤屋根をもつ木造の建物で、建物の上部が金色に輝いている建物がある。内閣府のホームページによると、ロシア正教の教会(http://www8.cao.go.jp/hoppo/hyakkei/02_habomai04.html)のようである。2005年11月8日に基礎工事が始まり、2005年11月13日に竣工したという急ピッチで建てられた建物だそうだ。内部はどうなっているのか、分からない。
1946年に北方領土の行政権が停止されてから、約60年が経過してから、わざわざ日本に見えるようにロシア建築を建設するということは、何の意味を持つのであろうか。ロシアが今後、北方領土の実効支配をさらに強化していくという意志を、日本に見せつけたかったからだろうか。

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 それから、上陸のための施設や、アンテナや、監視塔が見える。「監視塔」というのはいかにも、国境らしい施設である。
 歯舞諸島の水晶島はロシアの国境警備隊以外には、定住している人はいないという。面積は約21平方キロメートル、海外線の長さは32kmと、小さい島ではないが、木の影が一本も見当たらない、寂しい島のように見える。 
 ところで、北方領土の島々の面積は案外広い。択捉島が3184平方キロメートル、国後島が1499平方キロメートル、色丹島が253平方キロメートル、歯舞諸島は100平方キロメートルを有する。合計5036平方キロメートルで、千葉県の面積である5158平方キロメートルに匹敵する。その面積の広さが、北方領土の資料館や、日本政府が、北方領土の重要性を説明する根拠として強調されていた。
 しかし、僕にとって北方領土は、日本政府とロシア政府がおたがい領有権を主張する島という客観的事実でしかなく、仮に日本に領有権がうつったからといって僕の生活が向上することもなさそうだから、どちらか一方の政府の主張の味方をする気にはならないというのが本音である。あえて言うならば、北方領土が面積で二等分されて南半分が日本、北半分がロシアの領土になるのだとしたら、日本の陸地に「国境」が生じることになるわけだが、そういうことが現実として起こるとしたら、島国である日本に陸上の国境ができるというロマンを体験できるようになるので、それは面白いとは思う。ただ、そういうことを体験してみたいという知的好奇心を除いて、北方領土の返還を願う気持ちはあまり芽生えない。


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