地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

カテゴリ: ミャンマー

 雨が小康状態になったかと思うと、また強くなる。風もでてきて、近くの親子のさしていた傘がひっくり返る。

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【2016.7.7】像

 何の像だろう。雨を避けようと木の陰に入ると、小さな祠にこのようなもののが置いてあった。しかし、木の蔭でいくら待っていても雨の降りやむ気配はないし、たとえ一時間で降りやむとしても、木の蔭で一時間を過ごすのも退屈だろうと思い、雨に濡れながら歩いていくことにした。
 シュエダゴン・パゴダの近くの丘から町を見下ろす。

IMG_0942【2016.7.7】タチレクにて

 町中が雨に打たれて濡れている。

IMG_0943【2016.7.7】タチレクにて

 タチレクの町にはキリスト教の教会もある。この土地まで宣教師がはるばるやってきたらしい。小さな町の中に、仏教寺院もあり、イスラム教のモスクもあり、キリスト教の教会もある。
 坂を下りてしばらく歩いたところにある文房具屋さんの中をしばらくのぞく。文房具は主に、中国のものが多かった。ミャンマー語のモノポリーを35バーツ(約105円)で買って、おみやげとする。そうしているうちに激しい雨は止んだ。

IMG_0952【2016.7.7】タチレクにて

 タイとの国境に向けて歩いていく。

IMG_0959【2016.7.7】立ちレクにて

 さきほどの雨でどうも、水につかってしまったらしい。ホテルの従業員は必死に水を、排水溝へとほうきで掃いていた。その横で、このたまった雨水で、シートや傘といったものを水洗いしている人がいた。タチレクの町の排水は、タイ側ほどはしっかりしていないようにみえる。

IMG_0965【2016.7.7】国境沿いのマーケット

 国境沿いのマーケットは、DVDの海賊版が35バーツ(約105円)で販売されていたり、偽ブランド品や、偽バイアグラ、偽タバコなどであふれていたが、買う気にはならなかった。建前上、これらのものはタイに持ち込んではならないことになっていている。ちなみにDVDとしては、日本の映画や、韓国の映画なども幅広く取り揃えられていて、日本人や韓国人旅行客にも楽しめる内容とはなっていた(笑)
 ミャンマー側からタイ側をながめてみる。

IMG_0968【2016.7.7】タイ側を眺める

 白い門があるが、あれはタイ最北端の門(THE NORTHERN MOST OF THAILAND)である。国道1号線の最北端ということでタイの心理的な北限にはなるだろうが、地図をみてみるとこの国境の橋が北限ではなく、そこから約8kmから9kmほど北東側に進んだところがタイの最北端の地点となる。

IMG_0972【2016.7.7】タチレクにて

 タチレクをあとにし、タイ側に戻る。

IMG_0976【2016.7.7】タチレクにて

 国境で働く公務員が利用するオフィスや宿舎のようであったが、こちらも先ほどの雨で池のようになってしまっている。
 橋を渡る。入域許可証の返還と引き換えに、ミャンマー入国時に預けたパスポートを受け取る。パスポートを開いてみると、ミャンマーの入国および出国のスタンプが押されていた。

IMG_0979【2016.7.7】タチレクにて

 さようなら、ミャンマー。

IMG_0981【2016.7.7】ミャンマーを出国する

 強い日差しが降り注ぐ。

IMG_0982【2016.7.7】国境の橋

 雨に降られた上、事前にタチレクについて調べることもないまま行ったので、効率よく回ることはできなかったし、ミャンマー料理も食べられずタチレクをあとにするのはやや心残りであったが、仕方がない。少なからずミャンマーの空気感というものはつかんだから、それは成果であったと思う。二回目のミャンマー訪問は、物怖じすることもなかろう。

IMG_0990【2016.7.7】国境の橋

 雨季の熱帯の天気のうつろいは本当に読めない。
 ところでタイ側からミャンマー側に渡る人の多くが手に、ミスタードーナツの袋を手に提げている。タチレクではミスタードーナツがはやっているのだろうか。ミスタードナツは、外国資本が浸透しているタイ側にはあるが、ミャンマー側にはないものだ。タチレクはミャンマーの辺境にありながらタイに接していることで、ケンタッキー・フライド・チキン、ミスタードーナツ、セブン・イレブンといった国際資本のチェーン店を経験できるという、ミャンマーでは稀な場所なのかもしれない。

IMG_0992【2016.7.7】国境の橋

 国境ゲートでタイ人、ミャンマー人ではない第三国人は、入国カードを記入するなどの入国手続きをしなくてはならない。メーサーイからの入国では、30日間までの滞在が許される。ゲートが混雑していると思ったら、目の前に日本人の中年男性の集団があった。
 なお、メーサーイ・タチレク間の国境の開放時間は午前6時から午後6時までであるから、タチレク側に閉じ込められたりすることのないよう気を付けたい。

2016年7月 タイ北部6泊7日
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 ロータリーの西側に回教徒の居住区があることをみてから、またロータリーに戻り、ロータリーの東側を歩いていく。
 この町は、ミャンマー語、タイ語、中国語などがあふれている。

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【2016.7.7】タチレクにて

 タチレクがミャンマー、タイ、中国の三ヶ国が交錯する地域であることは以前の記事(#0391.タチレク訪問記3 - シュエダゴン・パゴダを参拝する)で、シュエダゴン・パゴダに三ヶ国の様式の仏像が安置されていることに触れながらも述べた。
 それにしても富士フィルムは世界企業だと思う。世界のどこにおいても見られる日本企業のマークといえばまずトヨタ自動車が挙げられるけれども、富士フィルムも日本企業としてはそれに次ぐ水準だと思う。

IMG_0901【2016.7.7】タチレクにて

 タチレクのアスファルトの道はどこも、泥で汚れていて茶色っぽくなっている。それも目につく、タイのメーサーイ側との違いの一つかもしれない。もっとも、タチレクの町が山を後背地とする場所にあって、雨が降るたびに山に降った水が市街地を流れて市街地を泥で汚していくという、地勢的な要因が大きく、それはタイとミャンマーの貧富の差に必ずしも起因するものではないかもしれないが。メーサーイ側はサーイ川を挟んで南側にあるので、タチレクの町を抱き込む山からはやや離れている。

IMG_0902【2016.7.7】タチレクにて

 タイ語の表記に、料金もタイバーツによる表記だから、もはやミャンマーだと気付くのは難しいのだが、お店の電話番号にはタイの電話番号と、ミャンマーの電話番号が表記されていて、やはりミャンマーなのかもしれないと思う。

 082-6879555(ไทย) <- タイ
 089-7018088(พม่า) <- ミャンマー

 また、雨が降り始める。

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 大きな道からひとつ内側に入り込むだけで道が舗装されていない。雨が降ればたちまちあらゆるところに水たまりができて、歩くのが大変だ。

IMG_0904【2016.7.7】タチレクにて

 住宅街に突然現れる、ものものしい看板。

 SERIOUS ACTION WILL BE TAKEN AGAINT DRUG OFFENDERS.
 薬物法違反者には厳罰が処されます。

 雨足がさらに強くなる。

IMG_0907【2016.7.7】タチレクにて

 しばらくお店の軒先で、雨宿りをさせてもらう。

IMG_0908【2016.7.7】タチレクにて

 オートバイが傘をさしている。
 雨宿りをした軒先は、カフェの軒先だったと思うのだが、お店には男の人しかいなかった。そしてみな、お茶とパンやクッキー類をつまみながら、テレビのスポーツ番組に熱中していた。
 雨が降りやむ気配もないから、近くのお店で傘を買うことにした。どれにしようかと選んでいると、お店の女の子が笑ながら「これはどう?」とでも言いたげに差し出してくるので、50バーツ(150円)で買う。

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 ピンク色のかわいい傘だ。なんでこれを差し出してくれたんだろう。ミャンマー人のユーモアだったのだろうか(笑)とにかく、今回の旅のお供となった。
 しばらく歩いていると雨はやみ、また、陽が差し始めた。

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【2016.7.7】タチレクにて

 雨が強く降ったり、やんだりと、ずいぶん忙しい。ちっとも降りやみそうもないほどの強い雨なのに、すぐにやんだりするから、熱帯の気候は僕にはよく分からない。
 マハミャムニ寺院(#0390.タチレク訪問記2 - マハミャムニ寺院の祈り)の入口の前を通りかかる。

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 寺院の入口へと歩いていく。

IMG_0915【2016.7.7】タチレクにて

 寺院の入口では、捧げる花などを売っている。

IMG_0921【2016.7.7】タチレクにて

 さきほどトゥクトゥクに乗って通りかかったところのはずなのだが、トゥクトゥクに乗っていると、こういう風景は見逃してしまうなと思う。あれは、何の花なんだろう。

2016年7月 タイ北部6泊7日
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 トゥクトゥクを下りてから、ミャンマー・タイ国境付近をほっつき歩く。

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【2016.7.7】国境付近

 国境付近はマーケットとなっていて、ときどき、安宿もみえる。

IMG_0881【2016.7.7】ホテル

 タイのプリペイドSIMカードを挿入したスマートフォンが通じることだし、入国時に500バーツを支払ってもらうことのできる入域許可証で14日間までの滞在が可能であることを考えると、この国境の町で一泊くらいするのは、今思うと悪くなかったと思う。
 国境の橋を渡ってまっすぐ進むと、すぐロータリーがみえる。

IMG_0886【2016.7.7】ロータリー

 ロータリーにはさまざまな、広告や看板が向き合っている。

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 タイ、ミャンマー、ラオスの三国国境地帯いわゆるゴールデントライアングルがいわゆる麻薬、覚醒剤の密造拠点であったという歴史からか、ドラッグに関する警告文があったり、お茶の看板があったりする。

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 ミャンマーの飲料会社だと思われるが、「ゼーノ」という日本語の名前がついているようである。
 「オキヤ」、「タバコ」、「バイアグラ」それから「ゼーノ」。これがタチレクの町で耳にしたり、目にしたりすることのできる日本語なのだ。この町では肩から籠を下げた、偽タバコ売り、偽バイアグラ売りが白昼堂々と歩いていて、日本人を見かけるなり、日本語でタバコ、バイアグラと話しかけてくる。
 さて、そういった彼らのことは構うことなく、橋からみてロータリーを左の方向、つまり西の方向へと進むと、おおくのイスラム教徒が歩いているすがたが見える。

IMG_0890【2016.7.7】タチレクにて

 タチレクの町の西部は、イスラム教徒が居住する地域となっているらしい。とはいっても橋の西側にはすぐに山が迫ってきており、居住区は小さい。
 進んでみると、モスクがある。

IMG_0893【2016.7.7】モスク

 「緬甸大其力華僑清真寺(ミャンマータチレク華僑モスク, タチレクは中国語で大其力と表記するようである)」と漢字で書いてある。
 どうやらこのあたりのイスラム教徒は、中国からやってきた回教徒のようである。ミャンマーは仏教国で、少数派のイスラム教徒はバングラデシュ方面からやってきた「ロヒンギャ」として知られているが、中国方面からやってきたイスラム教徒もミャンマーには少なからず住んでいるようだ。
 中国・雲南省には、大きなイスラム教コミュニティが存在した。彼らは、元代には現在のウズベキスタンのブハラ出身の官僚が雲南地方の統治を担当していたときに、改宗してイスラム教徒となった漢族たち、つまり回族の血を代々、引いている。清代の19世紀中盤に、労働者問題を契機として、回族と漢族との間に衝突が発生、暴動へと発展し、彼らの間に亀裂が生まれる。それから、雲南の回教徒たち、すなわち雲南回民たちは、1856年には雲南省・大理を中心として「平南国」の独立を清朝に対して一方的に宣言する動きをみせる。しかしこの動きは長くは続かず、最終的に、1873年には清朝によって支配権を再び奪われ、鎮圧される。この一連の流れを、回族による「パンゼーの乱」という。1856年から1873年の間には、雲南回民のうち100万人ほどが虐殺されたそうだが、同時に、虐殺されなかったもののうちの多くが、周辺のミャンマー、ラオス、タイなどの流出したという。タチレクの回教徒たちは、その時にこの地に定着した雲南回民たちの子孫ではないだろうか。
 歩いていると、また、大雨が降ってくる。

IMG_0898【2016.7.7】雨

 雨の降っている間に、昼食をとることにした。
 ミャンマー料理が食べたかったけれども周りには見つけられる、屋台のカオマンガイを食べることになった。

IMG_0895【2016.7.7】カオマンガイ

 水と合わせて40バーツ(約120円)くらいだったから、 タイとさほど価格は変わらない。屋台のおばさんはタイのラジオを聞いていたし、注文も会計もタイ語だったし、お店の中に貼ってあるメニューもタイ語だったし、通貨ももちろんタイバーツだったから、これではタイといるのと全く同じではないかと思うが、おいしかった。
 タチレクでミャンマー料理を食べるならば「Valentine Tea & Food Center」 というロータリーを左に約2kmほど進んだ右手にあるレストランが有名だそうだが、大雨が降っているため、そこまで行くことはかなわなかった(Google MapでValentine Restaurantと入力すると位置は表示される)。
 結局、ミャンマーのタチレクにまで来てミャンマー料理を食べずに終わってしまったのは心残りだった。しかし、仕方がない。次のミャンマー訪問の楽しみとしてとっておこう。カオマンガイを食べながら、雨が上がるのを待った。

2016年7月 タイ北部6泊7日
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