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カテゴリ:中国 > 新疆ウイグル自治区

 9泊10日(うちウイグルでは7泊8日)のウイグル旅行を終えた、僕のおおざっぱな感想として中央アジアの中でも「新疆ウイグル自治区への旅行をあなたにオススメしたい理由」と題して、他の中央アジア地域と比較しながら書きたいと思う。ただし、僕が訪問した地域は、カシュガル(喀什)、ヤルカンド(莎車)、カルギリク(喀什)、ホータン(和田)という、南部から南西部に位置する都市で、新疆ウイグル自治区内をくまなくめぐったことはでないことを断っておく。

■カシュガル(喀什)・ヤルカンド(莎車)・カルギリク(喀什)・ホータン(和田)等新疆ウイグル自治区南部および南西部はウイグル族の人口比率が高く色濃いウイグル文化を目撃することができる


カシュガル旅程-02

 このあたりは中華人民共和国の西端にあり、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンなどに接する地域である。新疆ウイグル自治区におけるウイグル族の人口比率は2013年の時点では約47.5%(ウイグルにおいて第1位, 第2位は漢族で約38%)であるが、カシュガル市、ヤルカンド県、カルギリク県のあるカシュガル地区ではウイグル族の人口比率が92.0%(2015年)、ホータン市のあるホータン地区ではウイグル族の人口比率が96.3%(2010年)と高くなっていて、色濃いウイグル文化を体験することができる。
 一方で、自治区の首府であるウルムチ(烏魯木齊)は、 ウイグル族の人口比率が12.5%(2010年)となっていて、74.9%を占める漢族と比較して少数派であるから、ウルムチは新疆ウイグル自治区内にはあるが中国の他の都市とさほど変わらないのである。

■中央アジアのイスラームの文化が色濃く残っている


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 中央アジアといえば文化的には、西トルキスタン(トルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン、タジキスタンとアフガニスタンの一部)と東トルキスタン(ウイグル)が該当する。かつて中央アジアの民族は国家を持つことはなかった。西トルキスタンはかつてはソビエト連邦の中にあったし、東トルキスタンは現在も中華人民共和国の中にあるままだ。
 しかし、あくまでも印象にしか過ぎないのだが、現在もなお中華人民共和国の中にある東トルキスタンの方が中央アジアのイスラームの文化を色濃く残しているように見えることがある。ウイグルでは、アラビア文字が使われており、肉声のアザーンを聞くことができ、墓はかつての様式を保っている。(#0488.ヤルカンドのアルトゥンモスク(Altun Mosque)で肉声のアザーンを聞く, #0489.ヤルカンドの墓地のおじいさんたち)
 そこに、ソビエト連邦による支配と、中華人民共和国による支配の違いを観察することができる。少なくとも中華人民共和国においてはウイグル族が中華人民共和国の国家体制に脅威をもたらさないと判断される限りにおいては、民族の伝統的な生活の在り方を保障されるようである。

■食べ物がおいしい

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 砂漠地域は手に入る食材が少ないし、安全な水が手に入りにくいことから、食材は豊富ではなく味もさほどよくないとは考えられがちだが、ウイグルはその固定観念を打ち破ってくれる。ウイグルもやはり砂漠地域にあって必ずしも食材が多彩だとは思わないけれども、調理法が多彩で、食堂ごとに自慢の味がある。
 西トルキスタン地域と比較するとウイグルは食堂の数がずっと多く、食堂ごとに味を競い合っていることから、当然、おいしくなると思う。また、中華料理の影響を少なからず受けていて、日本人の好みに合致しそうな味が多い。
 たとえばラグマンは、西トルキスタンではスパゲッティのような麺をフォークで食べる形式であるが、ウイグルでは讃岐うどんのようなコシのある麺を箸で食べるのである。 

■至るところに漢字が書いてある 

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 中央アジア地域で英語が通じることは稀で、西トルキスタンでは現地語(ウズベク語やタジク語など)とロシア語しか通じないし、ウイグルでは現地語(ウイグル)語と中国語しか通じない。(しかし、その中国語というのも残念ながら、日本における英語の通用度ほどは伝わらない)
 しかし、あらゆる施設や看板、商品には中国語、つまり漢字が併記されているため、文字をたよりにしていけば、日本人にとっては観光はたやすい。

■ビザが不要

 中国国内にあるため、 日本国籍保持者は15日間まではビザを免除される。西トルキスタンでは、キルギスとカザフスタンを除いては、入国のためのビザを申請する必要があり、旅行が簡便とは言えない。

■航空券が安く手に入る

 東京からカシュガルまでの往復航空券は2万円台から手に入れることができる(#0471.東京から往復25947円で行く南新疆カシュガルの旅)。西トルキスタンについて言えば、往復航空券はこの2倍から3倍はかかる。

■交通インフラの整備状況がよい 

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 例えば道路についていえば、タクラマカン砂漠の外周を走る道路の路面ですらきれいに整備されていて、その多くの区間で、中国移動の電波をキャッチすることができる。
 かつて、ウズベキスタンで乗ったタクシーが、路面に凹凸や穴が多数あって、突然、家畜が道を横切ってくるようなオアシス地帯の道を時速140km以上で疾走し神経を擦り減らしたことを考えると、とても安心感がある。また、ドライバーはシートベルトをするなど安全運転を心がけるが、ウズベキスタンで乗ったタクシーにはそもそも後席にはシートベルトすら備え付けられていなかった。

■治安がよい

 治安は安定しているようにみえる。盗難やスリについては、ことさら心配する必要はないようにみえた。
 気になるところはテロ、つまり散発する衝突であるが、これらは治安当局とウイグル族の間に起こる衝突であり、市民や一般の旅行者を積極的に対象にしているものではないようにみえる。しかし、過去、2009年7月に発生したウイグル騒乱のように、ウイグル族と漢族の市民間で殺傷をともなうような衝突が発生した事例もあることから、万が一、デモなどを目撃したら、近づいてはならないであろう。
 また、治安は安定しているものの、ヤルカンド、カルギリク、ホータンなどでは治安部隊が都市のいたるところにいて、彼らから職務質問をされる可能性がある。そして、場合によっては旅程に影響が及ぶ場合があるため、対応には注意したい。(#0495.ヤルカンドで警察に職務質問される)

■人々は基本的に親切である

 人々は基本的に親切で、外国人観光客だからといって、ぼったくったることはほぼない。しかし時に、外国人に関わることが余計な面倒を引き起こすのではないかという懸念からなのか、外国人を敬遠するような態度をとられることがあるが、中華人民共和国のひとつ自治区となっているウイグルの現状を考えると、仕方がない。
 なお、ウイグルの人々には、ウズベキスタンほどの過剰な(?)人懐こさはない。

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 また、現代にもなお残る「植民地」といった視点でこの地域を旅することは、他の地域では得られない考察を得ることができる。しかし、そういう現状に、心を痛めざるを得ないこともまた事実である。 
 民芸や工芸品は多くが、工業製品になっており、 こういったものに期待をするならばウズベキスタンの方がよい経験をできる可能性がある。

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 四川航空3U8085便に乗って、成都から東京へと戻る。

 成都 13:20 → 東京(成田) 19:00

 中国と日本の間には時差が一時間あるため、飛行時間は4時間40分である。乗客は3割から4割が日本人と、日本人が少なくなかった。話をきいていると、シルバーウィークの連休を利用して、チベット旅行に行った旅行客が少なくなかった。四川航空はチベットのラサにも就航しているから、成都空港で乗り継ぐことになるのだ。

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【2016.9.25】成都空港にて

 搭乗する。

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 しばらくしてから、機内食が出てくる。

IMG_4650【2016.9.25】機内食

 麻婆豆腐の機内食である。 
 4時間40分というのはあまり長くはなかった。機内食を食べてから、機内サービスの映画を一本みた。韓国映画ではあったが、あまり印象に残らなかった。それからしばらく目を閉じていると、東京に到着した。あっという間である。
 成田空港からは、カルギリク(葉城)で買った50元(約765円)で買ったウイグル帽を入れた、ウイグル語の書かれた紙袋を片手に、東京の電車へと乗り込み、家へと向かうのだった。
 ホータン(和田)のバスターミナルで別れた同行のK氏も、砂漠公路を横断し、ウルムチから上海へと向かう目的のフライトに無事に乗り継ぎ、上海を経由して無事に自宅へと帰宅したそうだ。
 自宅につくと、すっかりと夜になっていた。飛行機に乗って移動しただけの1日ではあったが、移動はそれでも疲れるものである。すぐに眠りについてしまった。 こうして、トルコの出入国スタンプがあるパスポート所持者は中国への入国を拒否されるだとかいったデマ情報(#0470.トルコへの出入国記録による中国入国拒否の噂はデマだった)に振り回されるところから始まった、9泊10日に渡るウイグル旅行は無事に終了したのだった。

2016年9月 ウイグル9泊10日
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 成都双流航空の四川航空のカウンターに行き、以前、利用した時(#0359.四川航空の激安航空券にはトランジットホテルもついていた)と同じように、トランジットホテルを申請にしいった。
 
 職員:「申し訳ございませんが、そのサービスは2016年7月をもって終了いたしました」

 あの太っ腹のサービスはもう、終了してしまったのだった。自力で寝るところを探し出さなくてはならない。インターネットで検索し、以前、宿泊したところの近くにある一泊60元(約920円)ほどの宿に泊まることにした。
 空港の近くにあるホテル街まではやや離れているため、タクシーを利用した。ホテル街には、自販機で大人のおもちゃが売られていたり、按摩やマッサージのお店が並んでいる。以前、やってきた時にはあまり目を配らなかったが、なかなか淫乱な街である。
 遅めの夕食とする。

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【2016.9.24】哈爾濱ビール

 この日は食事らしい食事といえば、機内食くらいしか食べていなかったから、ひどくお腹が空いていた。中国東北地方の料理をテーマとした居酒屋に入った。

IMG_4636【2016.9.24】枝豆と落花生

 お通しとして、枝豆と落花生が出てくるけれども、冷凍食品を解凍したものだったし、味もよくなかった。

IMG_4639【2016.9.24】冷面

 その次に「冷面(冷麵)」というものが出てくる。てっきり、朝鮮半島で食べられているような冷麺が出てくると思ったのだが、そもそも麺料理でもなかった。
 次に食べたのは、兎の頭だった。

IMG_4641【2016.9.24】兎の頭

 これは、四川ではよく食べられる料理だという。
 中国東北地方の料理をテーマとしたお店であったが、四川のものも食べてみる。

IMG_4644【2016.9.24】兎の頭

 その口、歯をみるとそれが兎であることがよくわかる。
 つるつると滑って、素手でもやや食べにくい料理だった。頭をかちわれば、脳の部分を食べることもできる。鶏に似ているが、やや臭みがあると思う。

IMG_4642【2016.9.24】餃子

 それから、主食の餃子を食べる。

IMG_4643【2016.9.24】餃子

 もう、おなかがいっぱいだった。2000円ほどになっていた。 ウイグルと違い、成都は物価が高い。
 それから、宿で一泊した。早朝から、カシュガル市内を観光していたし、飛行機にも長時間乗っていたから、疲れ切っていた。 すぐに寝てしまった。ついに、東京へと帰る日がやってくる。

2016年9月 ウイグル9泊10日
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