地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

カテゴリ: 日本

 東京で思いもよらぬところから富士山がみえると、心がほっこりする。そこには、高いビルの立ち並ぶ東京で、よくも奇蹟的に残ってくれたんだという感慨があり、感動があるんだと思う。とてもありがたいような気がする。

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【2015.11.21】荒川の土手から

 北千住の町から、富士山がみえることを今日まで知らなかった。それが多摩地区であったり、東京23区の神奈川寄りであったらさほど驚かないのだけれども、東京東部、足立区北千住から、建物の高いところにのぼることなく、地面に足をつけたところからみえることを知り、僕は驚いた。東京都心の東側と、東京都心の西側100kmの距離にある富士山の間には、東京都心のビル群があるから、「富士山は都心のビルに遮られてみえない。」とだろうという勝手な推測があったためだろうか。試しに北千住と富士山頂上の間に直線をひいてみると、その線は山手線の内側の地域を通るのだが、それは田端・西日暮里のあたりや、本駒込、千石、護国寺、目白・高田馬場などの文教地区を通過しており、たしかに高いビルが林立するような地域ではない。

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【2015.11.21】荒川の土手から

 銭湯の煙突と、富士山が一緒にみえる。東京の銭湯のペンキ絵といえば「富士山」というイメージがあるから、銭湯と富士山は相性がよいように思われる。しかし、この東京で、銭湯と富士山が同時にみえる場所というのは、ほぼ無いものと思う。

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【2015.11.21】荒川の土手から

 土手を進み、やや角度を変えてみてみると、マンションの建設現場と富士山が重なってしまう。あのマンションは、どこまで伸びてくるんだろうか。伸びようによっては、富士山はマンションによってすっぽりと覆われてしまう。千住の荒川の土手からの富士山の眺望は、もう失われてしまうのだろうか。そう考えると、なんだか感傷的になってしまう。初めて出会った景色だというのに、もう別れを告げなくてはならないのならば。

■眺望点の位置
足立区立千寿桜堤中学校付近の土手の上



 東京タワーと東京スカイツリーが、青、白、赤のフランス国旗と同じ三色にライトアップされた。これは、11月13日に発生した、パリでの同時多発テロの被害者に対する追悼の意をこめたものだと説明されている。

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【2015.11.15】東京タワー

 今回のテロでは129人が犠牲になったという。フランスの歴史を揺さぶりうる悲劇だ。この悲劇に対して、我々のできることは、犠牲者に対する追悼と、平和な社会の実現のために我々は何ができるのかということを考え、また議論すること程度だろう。それは大切なことだと思う。しかしながら、三色旗を用いた追悼キャンペーンに、僕は違和感を感じる。そこには複合的な理由があると思う。
 10月10日、トルコの首都アンカラで102人が死亡する爆弾テロが発生した。8月・9月にトルコの地を旅行している間、アンカラ出身のトルコ人と話を交わしたことのある僕にとってはとても衝撃的な事件であったが、東京タワーや東京スカイツリーをトルコの国旗をもとにライトアップするようなキャンペーンはおこなわれなかった。また、パリの同時多発テロの前日、レバノンの首都、ベイルートで43人が死亡する連続自爆テロが発生したが、やはり東京タワーや東京スカイツリーをレバノンの国旗色にライトアップすることはおこなわれなかった。なぜ、フランスばかりが同情されるのだろう。なんぴとも、命の価値は同等であってほしいけれども、トルコやレバノンの犠牲者については顧みられないのである。
 次に、追悼キャンペーンをおこなうにしても、国旗でその意思を表現することが適切であるか、という問いである。たとえば一晩、消灯してみるだとか、平和の象徴である「白」や「黄」のライトアップを施すなど、その方法はさまざまだと思う。テロの本質には、人々の不調和というものがあると思う。世界が目指すべき調和というものは、国家や宗教を超越したものであってほしい。だからこそ、国旗による表現による、国旗の下での連帯を印象付けるという行為に違和感を感じる。
 また、海外ではこれが「(日本が)フランスと同調して戦っていく決意」として捉えられてしまうのではないかという懸念もある。日本人にとってそれは追悼の意でしかないかもしれないが、海外から「日本人はフランス軍による軍事作戦すなわちシリアにおける空爆などを肯定している」というメッセージとしてうけとめられても、仕方がない。「東京をテロの対象としてもよい」と、テロリストに伝えているようなものでもある。果たして我々にそれほどの覚悟があるのだろうか。東京タワーやスカイツリーは私企業として、あまりにも責任の重い選択をしてしまったのではないかと思う。いや、そもそもそれが重い選択であるかということについて。あまり考えてはいないと思う。

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【2015.11.15】東京タワー

 東京タワーのフランス国旗色ライトアップは、皮肉にも、東京がこれから国際的なテロリズムに巻き込まれていく、その序章であるかのごとく感じられた。そうではないことを祈りたい。



 9日ぶりに日本に戻ってきた。10月25日から27日まで、友人の結婚式への出席と翻訳業務の関係で3日間、ソウルに滞在したのだが、東京・ソウルを2泊3日で往復するだけでは面白みがないので、アシアナ航空の、

10月25日 東京(羽田)→ソウル(仁川)
10月27日 ソウル(仁川)→香港
11月3日 香港→ソウル(仁川)
11月3日 ソウル(金浦)→東京(羽田)

 という組み合わせの航空券をエクスペディア(Expedia)で、46220円で購入した。受託手荷物ありで、東京→ソウル、ソウル→香港、香港→東京という3つのLCCの航空券を購入するのと遜色のない値段である。LCCのようなひどく狭い座席ではない上、マイレージがもらえ、また、機内食のサービスを考慮するとかなりお得な値段だと思う。なお、同じアシアナ航空でも、東京・ソウルの往復と、ソウル・香港の往復というふうに分割して購入してしまうと、価格は6万円を超えてしまうから、このようなワザは使うことができない。組み合わせて買うからこその割安運賃なのである。
 なお今回、香港では友人と会う以外のことはせず、香港を経由して中華人民共和国に入り、厦門(アモイ)、それと厦門からフェリーに乗って対岸にある中華民国(台湾)が実効支配している島、金門島をめぐった。

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【2015.11.3】浜松町駅に進入するモノレールの車窓

 9日ぶりに東京に戻ってきて驚くのが、空気のよさだ。青い、そして遠くがのものがハッキリとみえる。そもそも日本では、東京のような大都会は空気のおいしくないところとして認識されている。東京の空気は悪いし、東京の水はまずい。これが一般的な認識だと思う。だから、「空気が綺麗」だなんていう形容詞は、「東京」には釣り合わない。けれども、中国大陸から帰ってくると、東京は空気が綺麗なところだと思うようになる。ああ、これが本当の空だったんだなあ、と。何年間も東京を離れていたというわけではないのに、なんだか懐かしい感覚に捕われる。
 近頃、たくさんの中国人観光客が日本を訪れているという。おそらく、彼らの感覚も同じなんだと思う。「爆買い」という言葉に代表されるショッピングも日本食も、彼らにとっては魅力的なのかもしれないけれども、「日本に行けば本当の空に会えるんだ!」という感覚も、やはり、彼らを日本に引き付けているのではないかと思う。 


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