地球の覗き方

地球のことをのぞいてみよう

カテゴリ: 中国

 武当山駅は周辺の市街地からやや離れたところにあり、また、武当山の入山口からも離れたところにある。まずはこの駅から、武当山の入山口にあたる游客服務中心(旅行客サービスセンター)まで行かなくてはならない。202路あるいは203路のバスを利用すると、約1時間で到着する。タクシーを利用すれば、30分以内で到着できる。
 
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【2016.2.15】武当山

 武当山の駅前には、宿やら、食堂がある。前に進むと、突然、「パンッ、パンパンッ」という破裂音とともにわっと煙が上がった。ああ、春節の爆竹か。今まで、春節の爆竹というものを体験したことはなかったけれども、その破裂音と煙が何であるかはすぐに分かった。

IMG_3689【2016.2.15】爆竹

 アスファルトの上で爆ぜているのである。一連の破裂が終わると、お店の中からこどもが出てきて、破裂が終わり煙をもくもくと上げている爆竹を不思議そうに眺めにやってきた。その爆竹にまだ、燃えきっていない火薬がいくらか残っていたらしい。突然、パンッと一回だけ大きな音を出して破裂する。その様子に驚いて、こどもは勢いよくお店の中へと戻っていってしまった。
 旅行期間中、都市部で春節に街頭で火薬などの引火性のものに着火することを禁止するとの内容の通達がなされているのをよく見かけた。武当山駅周辺はどうやら「都市部」には当たらないからいいのだろうけれども、あまり安全とはいえないアスファルトの上で爆ぜる春節の爆竹は、もしかしたら、過去の景色になってしまうのかもしれない。

IMG_3691【2016.2.15】爆竹

 バスに乗っていこうと思ったが、時間がかかりそうだし、白タクの青年が連れてってやると積極的にアピールしてくるのでその情熱に負けて、乗ってしまうことにした。30分もかからない。
 武当山へと入山する全ての観光客は入山口にあたる游客服務中心でバスや乗用車を降り、入山料を払い、入山することになる。

IMG_3694【2016.2.15】游客服務中心

 游客服務中心には、飲食店やお土産屋さん、ホテルなどが立地していた。ただ、武当山を観光して回るのに、游客服務中心の周辺で宿泊することは、あまり効率がいいとは思えない。游客服務中心はあくまでも入山口であって、世界遺産に指定されている道教寺院などがある地域はここからさらに30km程度進んだ山中にある。山中にも多くの宿泊施設があるので、そちらに宿泊するのがよいだろう。

IMG_3695【2016.2.15】游客服務中心

 入山料は240元(約4184円)である。初め、245元という価格が提示されたが、5元は山中の事故に備えた保険料だというので、こちらは省くことができる。

入山券表

 車が当選するという、くじがついていたけれども、外国人観光客にはあまり嬉しいものではない。

入山券裏

 なおチケットには当日有効と書いてあるが、あくまでも入山料を払った日に入山ゲートを通過しなさいということであり、山中に宿泊し翌日、あるいは翌々日まで留まることは問題がない。
 域内は、乗用車の乗り入れが禁止されており、観光客は専用のバス(観光車)で各ポイントを移動することになるが、このバスはフリーで利用ができる。ただし、金頂や紫霄宮、ロープウェイのチケットは入山料には含まれておらず、別途、支払う必要がある。

武当山地図

 観光車の運行経路は以下のようになっている。

游客服務中心 - 南岩 26km 50分
游客服務中心 - 瓊台 25km 45分
游客服務中心 - 太子坡 12km 20分
太子坡 - 瓊台 15km 30分
太子坡 - 南岩 15km 30分

 南岩に宿を予約しておいたので、まずは、南岩に向かうことにした。やってきたのは、游客服務中心・太子坡間のシャトルだったので、太子坡で南岩行きに乗り換えた。乗り物酔いがひどい人は、酔い止め薬が必須だと思う。バス停に、吐瀉物の痕跡がいくつもあるのをみると、いくら屈強な中国人とは言えど、酔う人は酔うみたいだ。なお、山中の宿は、南岩や南岩から金頂に向かう道、瓊台に多くあり、金頂付近にもいくつか存在する。

IMG_3703【2016.2.15】南岩

 ついに南岩に到着!

IMG_3705【2016.2.15】南岩

 いい景色だ。

IMG_3707【2016.2.15】南岩

 標高は1000mを超えているはずだったが、さほど寒くはなかった。

IMG_3708【2016.2.15】宿

 これが予約しておいた宿、武当山建国飯店南岩客桟である。1階が入口のようになっていて、地下1階が客室となっていた。清潔だったし、暖房がよくきき、シャワーからもしっかり温かい水が出て、ツインルームが199元(冬季特価)だったので申し分なかった。
 世界遺産に登録されていてたくさんの観光客がやってくるだけあってか、観光インフラはかなり充実しているという印象だった。

■武当山旅行記
#0148.武当山旅行記1 - 武当山へと入山する
#0149.武当山旅行記2 - ここは仙人の住む里か
#0150.武当山旅行記3 - 武当山で迎える朝
#0151.武当山旅行記4 - 南岩から金頂へと登っていく
#0152.武当山旅行記5 - 神秘の灰が降る金頂
#0153.武当山旅行記6 - 金頂で大吉を引く
#0154.武当山訪問記7 - 五行糕を食べてからロープウェイで下山する
#0155.武当山旅行記8 - 太子坡、そして下山



 武漢から、武当山へと向かう朝。朝5時57分に出発するK122列車に乗るため、まだ日の昇らないうちに宿をチェックアウトし、武昌駅へと向かう。

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【2016.2.15】武昌駅

 K122列車で、ちょうど6時間かかる予定だ。ちなみにK122列車は前日の昼、午後1時54分に上海を出発した列車で、すでに16時間も走っている。さすが大陸、スケールが大きい。

2016冬 湖北・陝西

 運賃は69元(1200円)である。

武昌・武当山

 駅はまだ午前6時前なのにたくさんの人でごったがえしていて、たくさんのお店が営業中だった。中国の鉄道駅は、眠らない。
 列車に乗り込むと、たくさんの人が座席に横たわって寝ていた。3人掛けの座席をひとりで占領したりしている。僕の座席は占領されていなかったので、寝ている人を起こす苦労をしなくてよかったのは幸いだった。ちょうど前に座っていた女性は起きていて、ここに空間があるから荷物を置けるわよ、とか、ここのテーブルに食べ物をおいてもいいわよとか、何かと世話を焼いてくれて好印象だった。
 乗車する前に、武昌駅の近くの食堂で買っておいた熱乾麺と、ゆで卵を朝ごはんとした。

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【2016.2.15】 熱乾麺

 そして、武昌駅で買った、油條と豆乳も。

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 【2016.2.15】油條のパッケージ

 ところで、油條のパッケージに「中国風台湾味」と書かれていた。そもそも中国では台湾は、台湾省として中国の一部として扱われているんだから、中国風台湾味というのはおかしな表現ではないのだろうか。日本風北海道味といった表現が成り立たないことと同じように…。それとも、中国において台湾は、それは中華圏に属するものとは認識されていながらも、もはや自国ではなく外国として認識されているのだろうか。僕にはよく分からない。
 武漢を出てからしばらくすると、あたりが明るくなった。湖北省の田園風景が目の前に現れた。

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 【2016.2.15】車窓

 湖北省の田園地帯は、赤いレンガ積みの家が多かった。なかなか牧歌的で、いい景色だった。

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 【2016.2.15】車窓

 最初の4時間半は、列車は満員で、ずっと座席に張り付いていなくてはならなかった。車内販売もうるさかった。歯ブラシやら、おもちゃやら…。販売員はなんでも乗客に売りつけようとしてくる。これでは走る「テレビショッピング」である。
 襄陽の駅でたくさんの人が降りて行ってから、最後の1時間半は快適な旅だったが、総じて疲れる移動だった。以前、深圳から厦門まで高速鉄道に乗ったときは、至極快適で、パソコンを開いて旅行前にやり残した仕事を片づけたりしていたけれども、この列車ではそういうことはできそうにもない。

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 【2016.2.15】車窓

 武当山駅に近づくと、山やらトンネルやらが連続するようになる。

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 【2016.2.15】車窓

 伝統的な空間構造を残していると思われる里山などが連続していて、こういうところをめぐる旅も面白いだろうなと思った。

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 【2016.2.15】車窓

 旅行用のガイドブックには載っていない、美しい景色を見つけると、なんだか嬉しくなる。中国にはこういう、(外国人に)知られていない美しい景色というものがまだまだたくさんあるように思える。

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 【2016.2.15】車窓

 いよいよ、武当山に到着する。この列車の終着駅である十堰の一駅手前である。武漢からは6時間、そして上海からの出発からはもう22時間が経過している。

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【2016.2.15】車窓

 空気が澄んでいる。

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 【2016.2.15】武当山駅

 列車の中はたくさんの人間が詰め込まれていた上、暖房のためか空気が淀んでいたから、列車を降りて、背伸びをすると、新鮮な空気が自然と肺に入ってくるような気がして、生き返るようだった。さてと、目指せ、武当山!



 武漢での夕食は「大中華酒楼」で食べることにした。1930年創業という歴史のある湖北料理のレストランで、1956年には毛沢東がやってきて舌鼓を打ったことがあるという。

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【2016.2.14】大中華酒楼

 注文を済ませると、お茶を出される。

IMG_3578【2016.2.14】ジャスミン茶

 中国は地域によって、出てくるお茶の種類や、お茶の濃さが異なる。薄く淹れるジャスミン茶は、どちらかというと、南方というよりは北方という感じがする。
 お茶で、冷えた体を温めながら料理が出てくるのを待った。

IMG_3579【2016.2.14】野菜炒め

 3種類の野菜炒めが出てくる。その中でも珍しかったのが、武漢名産の野菜である「洪山菜薹」だった。宝通寺(#0143.武漢「宝通寺」 - 体をよじらせつつ古塔をのぼる)で栽培されていたものだ。

IMG_3584【2016.2.14】洪山菜薹

 油に、紫色の色素が滲み出ている。少し苦味があるのだが、その苦味がおいしい逸品である。もし武漢に来ることがあれば、試してほしい野菜だ。
 たくさんの野菜をご飯と一緒にか食べていると、ついにメインディッシュである「武昌魚」がやってきた。武昌魚は蒸しと、焼きが指定できたが、今回は蒸したもの(清蒸武昌魚)を食べる。毛沢東が武漢にやってくるたびに作らせ、絶賛したという武昌魚は一体、どのような味なのだろうか。

IMG_3588【2016.2.14】武昌魚

 なかなか大きい。
 この魚は團頭魴(だんとうぼう)という魚で、長江の水が流れこんでできた武漢と同じ湖北省にある梁子湖という湖でよくとれる、淡水魚なのだそうだ。
 身はとても柔らかく、脂がのっていてくどいくらいである。それでも海のない内陸の地域で、これだけ大きな立派な魚が食べられるのだから大したものだ。しかし、淡水魚らしい特有の泥臭さは否めないから、よくタレをつけて味わわなくてはならない。そして大きな骨のほかに、白身の部分に結構、小さな細い骨が入っていて、食べやすいとは言えない。

IMG_3589【2016.2.14】武昌魚

 もしかしたら、海水魚が豊富にとれる地域だったら、わざわざ食べない魚かもしれない。それでも、食べてみる価値はあると思う。この脂ののり方はなかなかで、非常な満腹感を味わうことができるのだ。
 こうして底冷えの1日を、ほどよい満腹感で終えることができた。

■大中華酒楼(戸部巷店)
 住所:武漢市武昌区民主路69号(戸部巷南側の入口にある) 
 インターネットで検索する場合、初めgoogle mapで検索したところ、間違った場所が表示されたので、百度(baidu)の地図を利用することを勧める。



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